MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『散歩する侵略者』

2017-09-20 00:50:13 | goo映画レビュー

原題:『散歩する侵略者』
監督:黒沢清
脚本:黒沢清/田中幸子
撮影:芦澤明子
出演:長澤まさみ/松田龍平/長谷川博己/高杉真宙/恒松祐里/満島真之介/笹野高史
2017年/日本

「ダラダラ」散歩する侵略者のつまらなさについて

 冒頭からタイトルバックが現われるまではかなり期待して観ていたが、その後はダラダラとしたストーリー展開で一気に興覚めしてしまったというのが正直な感想である。
 一例を挙げてみる。雑誌記者の桜井が天野と立てこもっている倉庫に品川が率いるチームがやって来た際に、天野が銃で撃たれて負傷するのであるが、何故か仕留める前に間を開けるために天野がマシンガンで反撃するチャンスを与えてしまい、チームは全滅してしまうのである。ここにはリアリティが感じられないのであるが、それは当然監督が意図したものであろう。そしてその意図とは何かと勘案するならば、これは過去のSF映画のパロディだという暗黙のメッセージを込めてのことではあろう。しかしどうもこのような演出が「テクニック」ではなく「下手」として見えてしまうのは、ギャグが「スベって」いるため緊張感が薄れ、『クリーピー 偽りの隣人』(2016年)がスリラー映画の良質のパロディであるように上手くいっていないのである。冒頭のシーンの派手さと比べるならばラストのオチが地味過ぎるのも気になる。それは加瀬鳴海の「無関心さ」と同時に鳴海の愛情を受け継いだ加瀬真治の「献身さ」不足が原因だと思う。
 ところで本作において拳銃やマシンガンや戦闘機の出現、あるいは真っ赤に染まった空が爆発するシーンなどを見ていると、黒沢清監督は『ダンケルク』(クリストファー・ノーラン監督 2017年)のような作品を撮りたかったのではないかと邪推したりするのであるが、黒沢は師匠である映画批評家の蓮實重彦同様にクリストファー・ノーラン監督を全く評価していない。しかしいくらノーラン監督のベーシックな演出の基本がなっていないとしてもどちらの作品が面白いのかは一目で分かってしまうところが現実の厳しさである。そもそも2時間を超す上映時間が長すぎる。ここは師匠の言う通りに90分でまとめるべきだった。


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