原題:『The Invisible Man』
監督:リー・ワネル
脚本:リー・ワネル
撮影:ステファン・ダスキオ
出演:エリザベス・モス/オリヴァー・ジャクソン=コーエン/オルディス・ホッジ/ハリエット・ダイアー
2020年/アメリカ・オーストラリア
オチの「ひっくり返り具合」について
明らかに低予算の作品だと分かるイメージで、登場人物が少ない代わりにその人件費を透明人間のCGに使われているように見えるのだが、それにしても脚本の粗さはどうにかならなかったものだろうか?
例えば、主人公のセシリア・カスと科学者のエイドリアン・グリフィンが出会ったのは2017年12月で、それから結婚後にセシリアが家から脱走する2020年1月までの約2年間に2人に何があったのかほとんど語られることがないために、セシリアがエイドリアンから逃げようとする、あるいはエイドリアンがセシリアに固執する強い動機が見えないのである。
描写も荒く、例えば、セシリアがエイドリアンの家に戻る時に、セシリアを車で送った人物が誰だったのかよく分からないし、その際に、セシリアは透明人間になれるスーツを盗み出しているのだが、エイドリアン側にその危機感が感じられず、透明人間と化したエイドリアンをおびき出そうとセシリアが自殺を試みた際に、盗んだペンの先でかなり深く手首を切ったように見えたが、その後意外と走り回ったり出来ているのである。
ところが本作は興行的に成功しているのみならず、批評家にも好評で、それはおそらくラストのオチの「ひっくり返り具合」が高評価に結びついたのかもしれない。