THE FOURTH PARTY

チョイ毒エッセイのようなもの。コメント欄でのやりとりはしません。用事がある人のみ書き込んでくだされ。

カイダックの使用を快諾する(ププッ笑)

2016-06-11 16:22:41 | 工作
転倒するたびに割れるTT-R50Eのフロントフェンダー。
TT-Rのフェンダーはゼッケンと一体成型で、2箇所の爪への差込とボルト2本で固定されている。軽いクラッシュの場合は爪が外れるようになっているため、一見工夫された固定方法に見えるのだが、酷いクラッシュの場合は一気に割れてしまうのだ。
実際、TT-Rに乗り始めて1年程度はスピードが上がらなかったせいか、割れてしまうことはなかったのだが、ここ最近はクラッシュするたびに割れてしまう。開発時に問題にならなかったのかなぁ?

これまで既に6個のフロントフェンダーを破壊した。純正品は現在の価格で¥3000ほど。
レースの時はともかく、練習の時くらいは割れを補修したものを使って出費を抑えたいところ。そこで、補修方法をマジメに考えてみた。

これが割ってしまったフェンダー。


ネジ固定部分は千切れずに残っているので、補修は比較的楽な部類かと。


最初に、半田ごてを使ってワレメちゃんを縫い合わせた。


置いておくだけならこれで全然OK。

そして。補強用の当て板として、カイダックを使用する。

カイダックというのは住友ベークライトの商品名で、アクリル変性高衝撃塩化ビニル板のこと。
塩ビは熱すれば柔らかくなるので、曲げ加工ができる。引っ張れば延びる。そして熱し続けると、逆に縮む特性がある(体積が小さくなるわけではなく、元に戻ろうとする)。
屋外用のステッカー、モトクロスのデカールは塩ビ製。三次曲面に貼る事ができるのは、塩ビのこの特性のおかげなんであるよ。
もちろん他の樹脂も同様の性質を持っているのだが、塩ビはより現実的な温度で柔らかくなるので、加工がしやすい。
普通の塩ビは元々それほど強いわけではないんだけど、カイダックはポリカーボネートに匹敵する強度を持っているとか。ポリカは、バイクで言えばゴーグルのレンズとか、オンロードバイクのスクリーンとかに使われているヤツね。カイダックは5年位前に話題になったと記憶している。

なんで詳しいのかっちゅうと。
実はこのカイダック、俺の仕事では割と一般的な素材で、もちろん材料として普通に仕入できるのだ。ただ、俺が通常やっているような、単品~少量製作の仕事ではあまり出番は無いかな。
多品種中量生産、樹脂製品としては大型な製品向け。

射出成型などと違って、凸型か凹型のどちらかがあればバキューム成型で形を作る事が出来る。ドロドロに溶かさなくても、板がフニャフニャになるまで熱すれば成型できるので、いわば板材を二次加工するだけで製品が出来上がる。
このため、他の樹脂板(アクリルなど)はメーカーからラインナップされている色数がどんどん減少傾向にある中、カイダックだけは比較的多目の色があるのだ。

さてさて、ウンチクはこの辺にして。
入手したのは1.0tの1000×2000、黒い板。


業販価格はネット上に書かない、という暗黙の取り決めがあるので、価格は書けまへん。また、ウチは製作施工会社なので、小売はしまへん・・・収拾が付かなくなってしまうんで。持っている板を切り売りするなら、直接声をかけてもらえれば対応しやす。

この1mm厚であればハサミで普通に切れる。
これをヒートガンで熱してフニャフニャになったところをフロントフェンダー内に発泡ウレタン(洗車スポンジとか)で押し付けるだけ。


言葉で書けば一瞬だが、これくらい深い成型だと、割と時間が掛かる。
正に粘着の無いデカールを貼るような感じで、ちょっとコツが必要かな。溶接仕事で指先の皮が鍛えられている俺でも、手袋必須という感じ(笑)。


形が出来たら不要部分をカットして、ボンドで接着するだけ。


フェンダーはポリプロピレンなので普通のボンドでは接着できない。これは分子構造が理由なのだそうだ。ところが最近は、接着できると銘打っている接着剤もいくつかある。セメダインのPPXか、コニシのGPクリア、同じくコニシのSU。あとは、超強力両面テープでもある程度の接着力が期待できる。

この中ではSUを一番よく使うんだけど、実際にPPに使ってみると、そこまで強力にはくっつかないのですわ。そこで今回は、カイダックを大きめに成型したものを貼り付けて、空気を遮断することで大気圧による接着力に期待しようというもの。乱暴な例えをすれば、吸盤のような感じである。

ところでこのカイダック、モーターサイクル業界では大流行。
最も良く見かけるのは、トライアル関係。薄く、軽く、強度のあるものを作れるからだろう。
誰が見ても「おっ、キレイだね」と言ってくれるようなものを自作するには、ちゃんとした型が必要だろうから、今んとこ何かを作ってやろうという気にはならないかな。純正のコピー品を作るなら、石膏で型を採るといいだろう。
ただ、チャイルドクロスで使用する場合は、注意が必要。
MFJの車両規定では、「純正部品と同材質の物に限る」とあるので、カイダック製のコピー品はもちろんのこと、今回のような補修での使用も不可となる可能性がある。チャイルドクロス以外では「柔軟なもの(例・プラスチック)」というだけの規定なので、多分大丈夫だろう。

材料の特性上、熱のかかる部分には使えない。エンジンやマフラーに接触するようなガード類の製作に使うのは、厳しいんじゃないかな。
コメント
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