江戸川乱歩賞の受賞作の3作目に選んだのは、西村京太郎の「天使の傷痕」だ。
この作品を選んだのは、もともと、西村京太郎の作品が好きだったからだ。
文章が、読みやすく、すっと頭に入ってくる。自然なのだ。
しかし、途絶えていた。理由は、テレビドラマ用の鉄道路線の名前のついたような
トラベルミステリーを敬遠していたためだ。
この作品の題名も、原題は、「事件の核心」だったというから、改題して良かったと思う。
この作品は、地味なのだが、自然と引き込まれていく。事件のとっかかりも、
主人公のデート中に殺人事件にまきこまれるという平凡なものだ。
一見、主人公の個人的な世界の中での事件のように思われるが、実は、
サリドマイドという社会派的な主題も潜んでいる。
何とも、重苦しい結末のように思えるせつな、母親の一人が、「あの子の写真を
撮ってください。」と訴えるのが救いか、そして、最後のエピローグに導かれる。
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