澎湖島のニガウリ日誌

Nigauri Diary in Penghoo Islands 澎湖島のニガウリを育て、その成長過程を記録します。

池上彰の現代史講義 「中国と台湾の対立」

2011年09月14日 04時47分27秒 | 台湾

 9月12日、BSジャパンで放送された「池上彰の現代史講義」(第4回)、「中国と台湾の対立」は、とても見応えのある内容だった。

 この番組は、信州大学経済学部における正規授業「現代史基礎」をそのまま放送するもの。

 受講する学生は、二十歳前後だろうから、中国と台湾の対立と言われても、同時代としての実感はないだろう。
 池上氏は、たぶん、そのことを考慮して、「何故、東日本大震災に対して台湾から200億円以上もの巨額な義援金が寄せられたのだろう」という問いから授業を始めた。それは「何故、台湾人は親日的なのか?」という問いに繋がり、日本と台湾、中国と台湾の関係に進んでいく。

 以前民放番組の中で、池上氏は「中国と台湾」について話したことがある。このときは、「李登輝友の会」など親台湾派と目される団体からクレームが付いた。私が見た限りでは、25分程度の枠の中でよくまとめた内容だと思ったのだが、専門的な人達からはいろいろなクレームも来たようだ。
 中国と台湾の関係について講義をするのならば、私は、次のようなポイントがあると考えている。

1 「ひとつの中国」を巡る中国共産党と中国国民党の抗争
2 日本統治時代の台湾に対する評価
3 台湾人の立場から見た「中華民国」体制
4 「中華民国」と「中華人民共和国」 
5 民主主義国家・台湾と独裁国家・中国

 この講義をつぶさに見てみると、どの点についても万遍なく目配りが行き届いている感じがする。
 1については、満州人の征服王朝である清朝を倒した辛亥革命そのものが、「ひとつの中国」というイデオロギーを創りだしたという点。「中国はひとつであらねばならない」という強迫観念が、現在まで続く中共(’=中国共産党)と国民党との抗争を産みだした。
 2の「日本統治時代」の評価については、「近代化への寄与」という点で高い評価を下している。これは、一般のTV番組などでは、ごく控えめに語られるに過ぎない。「植民地は悪だ」という固定観念があるから、日本統治時代の実相を検証したりはしないのだ。数少ない例外がNHKの「アジアの”一等国”」だったが、それは台湾の日本語世代からも批判が出るほどの偏向番組だった。ここで池上氏が「台湾人が親日的」である理由として、日本統治時代が台湾社会の発展・向上に寄与した時代であったことを指摘したのは高く評価する。古巣・NHKは、その正反対のことを「アジアの”一等国”」でやったのだから…。
 3に関しては、「二二八事件」の経緯、その本質を的確に学生に説明していた。この事件を素通りするのでは、台湾人の心情が分からないはずだが、池上氏はきちんと押さえていた。
 4及び5については、李登輝総統以降の台湾政治を詳しく説明して、共産党一党独裁の中国と対比させた。台湾独立を目指す民進党(民主進歩党)の成立にも触れて、陳水扁・前総統の「政治裁判」にも言及した。その上で、来年の馬英九vs.蔡英文の台湾総統選挙にも触れた。
 ほかにも、「本省人と外省人」など、分かりやすく説明していた。

 台湾に詳しい知人にこの番組の感想を聞いてみたら、概ね満足だったようだ。NHKや民放番組では、決して話すことが出来ない池上氏自身の歴史認識を知ることができたのもよかった。

 最後にどうしても書いておきたいのは、日本の大学教授の中で、自分の授業をすべてTV番組で公開出来る人が、どれだけいるのか、ということだ。
 「放送大学」というのがあるが、あれはスタジオで編集された映像であり、教授のひととなりがわかるエピソードやジョークなどが一切カットされている。あまり人間味のない授業なのだ。
 親しみやすく、分かりやすく受講者に伝えるという点で、池上彰・信州大学特任教授による講義は、最高!! と言っておこう。

 


 

 

 

 



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