GITANESの煙が流れる錯覚が見えたようだった。
それとは無関係に・・・。
H「で、こういうファックスが届きましてね。」
仕事が大体終わって、そろそろ帰ろうかという午後7時半。
そんな話しかけ方があるもんかい、と思うような話しかけられ方
は、同期の久田氏から。
全く何の脈絡もなく本当に唐突に、そう声を掛けられたのだ。
私「ん?」
H「ほれ、これ。」
『御社から、株式会社T社宛のファックスが当方に届きました。
当方、T社ではありません。ご一報まで。』
差出人不明のファックス。
間違って送信してしまった先の人が、親切にもファックス返信で
誤りを教えてくれたようだ。
H「で、T社宛のファックスを送ったのは私なんですがね。」
私「ふん。」
H「間違ってないんですよ、ファックス番号。」
私「どういうこと?」
H「あってるんです、番号は。いつも送ってる番号だし、
送信履歴の番号もT社の正しい番号だし。」
私「ほう、送信履歴って、知ってるんだ。」
H「馬鹿にしなさんな。」
確かに番号は合っている。
H「混線ですかね?」
私「NTTじゃないから分からん。」
今時混線なんてあるのかどうかわからないが、二人で考えていても
まったく原因は思いつかないので考えるのをやめてしまった。
H「T社に電話して、尋ねてみます。」
私「何を?」
H「送ったファックスが届いてないかどうか。」
H「あ、もしもし?私○○社の久田と申します。そちらの
○○さん宛にファックス送ったのですが、確認できますか?
・・・ええ、夕方です・・・はい、そうです・・・
あ、届いてませんか・・・番号は**-****-****ですね、
やっぱり合ってますねえ・・・。」
正しい送り先には届いてなかったようだ。
H「じゃあ私、もう一回送ってみます・・・はい・・・
それじゃあ、届かなかったら申し訳ないですが、こちらへ
電話していただけますか?・・・はい・・・よろしく。」
私「ねえ久田さんよ。」
H「はい?」
私「『届かなかったら電話しろ』って言って、先方はびっくりして
なかったかい?」
H「いや、『わかりました』って。 どうして?」
私「『届いたら電話くれ』でないと、困らんかね?」
H「ほう・・・そんなもんですかね・・・」
私「・・・そんなもんだと思うがね・・・。」
二人の間にはひんやりとした風が流れ、もしここに大きな
古時計があれば、確実になっていたはずだ。
そんな空気だった。
私「お先に。」
H「お疲れ様。」
さて帰って犬の散歩だ。
犬との間には言語が不要なので、
非常にシンプルでよろしい。
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