都月満夫の絵手紙ひろば💖一語一絵💖
都月満夫の短編小説集
「出雲の神様の縁結び」
「ケンちゃんが惚れた女」
「惚れた女が死んだ夜」
「羆撃ち(くまうち)・私の爺さんの話」
「郭公の家」
「クラスメイト」
「白い女」
「逢縁機縁」
「人殺し」
「春の大雪」
「人魚を食った女」
「叫夢 -SCREAM-」
「ヤメ検弁護士」
「十八年目の恋」
「特別失踪者殺人事件」(退屈刑事2)
「ママは外国人」
「タクシーで…」(ドーナツ屋3)
「寿司屋で…」(ドーナツ屋2)
「退屈刑事(たいくつでか)」
「愛が牙を剥く」
「恋愛詐欺師」
「ドーナツ屋で…」>
「桜の木」
「潤子のパンツ」
「出産請負会社」
「闇の中」
「桜・咲爛(さくら・さくらん)」
「しあわせと云う名の猫」
「蜃気楼の時計」
「鰯雲が流れる午後」
「イヴが微笑んだ日」
「桜の花が咲いた夜」
「紅葉のように燃えた夜」
「草原の対決」【児童】
「おとうさんのただいま」【児童】
「七夕・隣の客」(第一部)
「七夕・隣の客」(第二部)
「桜の花が散った夜」
師匠は「辛夷の実」を描いてきました。
何を描いたか書いていないので想像ですが、「辛夷の実」だと思います。
師匠は季節は足早だと書いてきましたが、今は逆戻りで暑くなりました。
昨日は27.8℃まで上がりました。
10月に夏日になりました。
師匠は市の検診を受けたそうです。
血圧は152だったそうです。
師匠! それは「白衣高血圧」というやつです。15〜30%の人がそうなるそうですよ。
赤い実は集合果であり、でこぼこ状である。「こぶし」という名前はデコボコの形が子供の握りこぶしに似ていることに因むという説と、蕾が子供の握りこぶしに似ているとの説がある。 |
師匠! 今回は「木の実」ですね。
私は「真弓能の実」を描きます。
去年は、ほとんど生らなかったんですが、今年はたくさんなりました。ピンクがきれいです。
↑師匠が私にくれた絵手紙
私が師匠に送った絵手紙↓
今日は、前回の汗腺癌の手術の時に一緒に切除はずだった腕にあるしこりの切除に行ってきます。前回1時間の予定が2時間もかかってしまい切除できませんま。悪性でないことを願っています。
したっけ。
今回は、「水月観音(すいげつかんのん)」を描きました。
東慶寺(〒247-0062 神奈川県鎌倉市山ノ内1367)の水月観音の御利益は、悪い縁を切って、良い縁を結ぶというところです。
ひいては人の縁に限らず、仕事や旅の安全、財産など、さまざまな良縁にも当てはめられ、要するには考え方でいろんなご利益を求めることができます。
でも「水月」の名前の意味は、水に映る月。
それは一瞬で形を変えて、消えてしまう儚いもの。
そして、それを見ている自分もまた、水面の月のように移ろいゆくものなのである。
水月観音は、そんな「空」の教えを衆生に示しているのです。
水月観音坐像 東慶寺の水月堂に安置されている「木造彩色水月観音坐像」(もくぞうさいしきすいげつかんのんざぞう)は、 京都では見ることのできない鎌倉地方独特の彫刻で、白衣をまとい岩坐の上にゆるやかに、やや斜めに腰をかけ、水に映る月を眺めている像(国重文)。 |
したっけ。
師匠は今回「茄子を描いてきました。
師匠の菜園は今までにないほど茄子がとれたそうです。
一富士(無事)二鷹(高い)三茄子(成す)と縁起の良い初夢ですが、四は扇で五は煙草、六は座頭(怪我無い)なんですねと書いてきました。
一富士(不死)二鷹(高い)三茄子(成す)四扇(末広がり)五煙草(煙が上昇)、六は座頭(怪我無い)というのもありますよ。
それにしても、まだ初夢には早いですよ。
師匠は「退院おめでとう」と言っています。
師匠! まだ母の四十九日もありますし、納骨もあります。ついでに、古い祖母の位牌を「魂抜き」していただき、処分することにしました。位牌が仏壇に入らなくなりましたからね。
お寺のことも、色々あって初めてのことも多いです。
まだ、相続の書類が集まっていないのも、気がかりで、何かと落ち着きません。
茄子は美味しいですよね。歳をとってから、茄子の美味しさに気づきました。
日本に伝わったなすは、初めは崑崙紫瓜(インドの紫瓜)といわれ、奈良時代の『正倉院文書』には、藍国茄子の名で登場以来、なすびと呼ばれるようになりました。これは夏に味が良いことから夏味が転化したとか、成す、生すにつながる縁起からとか、名前の由来には諸説紛々あります。 ナスはナスビともよばれる。ナスは「為す」「成す」の意味で、実がよくなることに由来するという。『和名抄 (わみょうしょう)』では「茄子は、中酸実 (なすび)の義なり、その実少しく酸味あればなり」という説を紹介している。 |
師匠 茄子と来れば胡瓜ですよね。
私は「胡瓜」を描きます。
↑師匠が私にくれた絵手紙
私が師匠に出した絵手紙↓
したっけ。
夏、日高山脈第二の高峰、カムイエクウチカウシ山(通称カムエク)を、目指していた登山パーティーがあった。
山の名称はアイヌ語の「羆(神)の転げ落ちる山」に由来する。
パーティーは高山拓真、山口宏樹、森山健太、峰野大輔、岩崎岳夫の五人構成で、年齢や職業はバラバラだった。
彼らは、SNSで知り合った登山愛好者のパーティーだ。
高山、山口は上級者で、森山、峰野は中級者だった。岩崎だけが学生で初級者だった。
リーダーは年長の高山と決まり、サブリーダーは山口と決まった。
山に入って一日目。
五人は〝渡渉〟を繰り返しながら、札内川本流を進み、八ノ沢出合に到達。更に、八ノ沢を遡行し、キャンプ適地で宿泊した。
特に事故もなく、登山は計画書通りに進んでいた。四日間の予定だ。
二日目。
八ノ沢を遡行し、〝高巻き〟や〝へつり〟を繰り返し、八ノ沢カールに到着した。
昨晩のラジオの天気予報では、今日の天候が思わしくないことが分かっていた。
そのため、高山は停滞を決定した。
テントは平らな場所に張る。入り口は風下にする。ペグがしっかり打てるか確認する。川・沢の近く、崖下はテントを張らない。登山道の近くはなるべく避ける。
高山が指示をして、設営場所を決定した。
予報通り、雨風が次第に強くなり、テント内で簡単な食事を作って腹ごしらえをした。
その日は、トランプをしたり、互いの経歴などを話したりと、楽しく時間をつぶした。
天気予報を聞いて、明日の朝、小雨なら出発しようと決めた。
二日目も特に何事もなく終了した。
三日目。
朝、一番早く起きた森山が、外の様子を確認にテントを出て、帰ってきた。
「かなり霧が出ている。待ったほうがいいかも知れない」
高山がテントのドアパネルから外に首を出すと、辺りは霧で真っ白だった。
朝食後、様子を見ていたが、霧は晴れそうもなかった。
メンバーは昨日停滞したこともあって、できるなら出発したい様子だった。
しかし、この先〝巻き道〟があり、滑落事故の危険があると高山は判断した。
話し合い、その日も停滞することにした。
昼、霧が更に濃くなってきた。
雨こそ降っていないが、霧の中を歩き回るのは危険で、テントを出る者はいなかった。
夜になってから、動物の軽い足音がテントの回りをコソコソと歩いていた。
キツネだ。テントから出て追い払った。
「何か外に置き忘れていないか?」
山口がメンバーに聞いた。
「あ、〝クッカー(鍋)〟だ!」
岩崎が、慌てて〝クッカー〟を回収した。
初心者の岩崎が、うっかり〝クッカー〟をテントの外に放置してしまったのだ。
夜の動物が活動するこの時間、食べ物の臭いを外にじかに出しておくのは危険だ。
「おいおい、羆でなくてよかったよ。気をつけてくれよ。テントから百メートルも離れた場所で食事をした意味がないだろ」
高山が岩崎に注意した。
三日目はこうして終了した。
四日目。
朝、高山が外の様子を確認するが、二メートル先も見えないほどの霧に包まれていた。
本来の日程では、この日になっても停滞するようなら計画を中止し、別ルートで山を下りることになっているが、霧が濃く、行動することは危険が伴う状況だった。
話し合うまでもなく、また停滞した。
午後、少しでも晴れそうなら下山することを考えたが、霧はますます濃くなるばかりだった。昼とは思えないほど薄暗かった。
トランプも飽きてきて、話題も尽きた。
夜、早めに明かりを落とし、就寝した。
テントの内側が霧を吸って濡れていた。テント内は強い湿気が充満し、不快だった。
数時間後に、異変が起きた。
最初に山口が気づき、隣に寝ていた高山を起こした。
「さっきから、足音がする。キツネじゃなさそうだ」
眠ってはいなかったのか、全員が上半身を起こして耳を澄ます。
重くゆっくりとした足音が、ジャリ、ジャリと音を立てる。
時折聞こえる鼻息のような音が不気味だ。
全員息を潜め、鼻息の主を連想していた。
甘くすえたような独特の激しい獣臭が鼻を突いた。この臭いは羆だと高山は思った。
どうやら、一頭だ。この時期に一頭なら、雄だ。雌なら小熊を連れているはずだ。
誰からともなく、みんなテントの中央に集まって、身を固めた。
そのうち、その動物がテントの布に鼻を押し付けては、激しく臭いを嗅ぐという行動を始めた。鼻の形が、内側に飛び出した。
嗅いではテントの周りを巡り、また嗅ぐ。
みんな、恐怖に震えながら、身を寄せて声を押し殺し、動けなかった。
しばらくして、テントの布が内側に大きくせり出して、動物の体形が浮き上がった。
羆だ。間違いない。全員が思った。
せり出した羆に触れないように、全員が反対側に身を縮め、息を殺した。
羆は木などに背を擦り付けて自分の臭いをつけ、縄張りを主張する習性があるのだ。
見慣れないテントを見て、体臭をつけているのだろう。
本気を出されでもしたら、羆にとってはテントなど紙風船みたいなものだ。
悲鳴を上げそうなのを堪えながら、全員がテントを破られないことを祈った。
羆は五分ほど鼻を押し付けることを繰り返した後、またしばらく、テントの周りを、円を描くように歩いていた。
初級者の岩崎は、泣きべそをかいていた。
それは明け方まで繰り返され、静かになった。全員が少し眠った。
高山の記憶では、過去にもキャンプ場付近をうろついた羆がいた。その羆は、十日間ほど、そこに居付いたことがあった。
羆は付近の植物を食べながら移動して行くので、しばらくは居付く可能性があった。
高山は五人が持っている飴やクッキー、サブレ、羊羹などの行動食と水を確認した。
行動食を十等分し、臭いが漏れないようにビニール袋に入れ、口を固く縛った。羆は犬の七~八倍の臭覚がある。
一日一袋で、十日間持ち堪えるよう、指示した。水の量には、不安があった。
ここでは、スマホは使えない。
五日目。
野鳥の騒がしい声で目が覚めた。
霧は晴れていなさそうだ。薄暗かった。
羆の臭いは、依然として、漂っていた。
どこかで、もしくはテントのすぐ側で、様子を窺っているのかもしれなかった。
みんな、黙りこくっていた。筋肉が硬直して動かない。長い沈黙が続いた。
昼頃、足音が復活した。
しばらく歩き回った後、また消えた。
峰野が勇気を振り絞って、僅かにテントのドアを開け、外の様子を窺った。
「霧が、少し晴れている。羆もいない」
微かに陽が差し、晴れる兆しが見えた。
すぐに下りるべきだと主張する側と、明日まで待つべきだという側に分かれた。
まだ、羆が近くに居るかもしれなかった。
それに、その時間から下山を開始したとしても、登山道の途中で夜を迎えることになるのは明白だった。
完全に霧が晴れたわけでもなかった。
悪天候で、しかも夜に行動するのは事故の危険性が高くなる。
高山はリーダーとして、下山を許すことはできなかった。
数日間、恐怖にさらされて、寝不足の中、冷静な判断だったかは分からなかった。
また、羆がやってくるかもしれない。
高山は、持っている全てのペグを打って、テントを補強するように指示をした。
とにかく、その日はそれで日が暮れた。
誰も会話をしなくなった。
恐怖からだけではなく、パーティーの考えが対立したことに大きな原因があった。
その晩も羆は、テントの周囲を巡り、時折体を押し付けてきた。
誰も眠らなかった。
六日目。
前日、晴れる兆しが見えたのが嘘のようだった。相変わらず霧が濃い。
朝起きても、全員が終始無言だった。
羆を刺激しないように、誰も行動食を食べようとしなかった。
全員が、周囲の状況に五官を研ぎ澄ましていた。羆の臭いは薄らいだように思った。
数時間後、森山が外に出ると言い出した。
みんな反対した。
「様子を見るだけ、羆も今なら近くにはいないと思う。臭いもしないし…」
森山は執拗に許可を求めた。
周囲を見るだけで、すぐに帰ってくるのを条件に、高山はそれを許した。
森山が霧の中へ消えて行った後、山口は高山を非難した。しかし、すぐに黙った。
しばらくして、足音がした。
森山の帰りを期待した高山は、テントを開けようとしたが、すぐに手をとめた。
森山でないことは直ぐに分かった。
獣の臭いがする。
羆の鼻息が、今までに増して荒かった。
すぐに体の押し付けが始まった。
高山たちは、声にならない悲鳴を上げて、身を寄せた。
峰野が消えそうな声で言った。
「森山はどうした?」
誰も応えなかった。
羆はしばらく周囲を巡ったのち、腰を落ち着かせたのか、足音は消えたものの、甘いすえたような臭いは相変わらず強かった。
その後、羆の臭いが途切れることはなく、高山たちはテントの中で動かなかった。
森山は帰ってこなかった。
襲われたのだろうか? 全員がそう思ったが、誰一人口に出さなかった。
七日目。
相変わらず、霧が濃かった。
羆の気配が消えた。どこかに行ったのか、まだ近くにいるのかは分からなかった。
しばらくの沈黙の後、岩崎が山を下りると言い出した。
この状況は初級者には限界だった。寝不足から目が血走って、声はヒステリックだ。
高山が、「霧が濃いから危険だ」と説得を試みるも、岩崎は聞く耳を持たなかった。
「下りたら助けを呼んでくる。待ってろ!」
岩崎は、荷物を持って霧の中に消えた。
五人いたパーティーは、高山、山口、峰野の三人になった。
羆のいない間に、小分けした行動食を食べた。火を使った食事は、臭いが出るので、できなかった。
会話はなかった。時間だけが過ぎた。
昼頃、外を見たが霧は晴れていなかった。
日暮れ時に、また羆がやってきた。
三人は中央に固まり、羆の気配に耐えた。
湿気が多く、汗がしたたり落ちた。みんな震えていたが、なんとか声は出さずにいた。
岩崎は下山できたのだろうか…。
八日目。
朝になっても霧は晴れなかった。
羆の気配はしないが、安心はできない。
「下山しよう」と言う者はいなかった。
霧の中に出て行くことを、躊躇していた。
高山は、今までのことを、日記に書いて気をまぎらわした。この日記を持って、無事に帰りたいと思った。
十四時ごろ、山口が狂った。
ケラケラと笑い出し、キーッと甲高く叫んだ後、笑いながら何も持たずに、テントを飛び出して行った。
山口は霧の中に吸い込まれて行き、笑い声だけが残った。その笑い声も、山口を追いかけるように、霧の向こうに消えた。
峰野が静かに、テントのドアを閉めた。
「行ったな…」
峰野が、ぼそっと呟いた。
その夜も羆が来た。
高山と峰野は二人抱き合って夜が明けるのを待った。
九日目。
今日も、霧が濃い。
羆は相変わらず近くにいるようだったが、昼ごろどこかへ行った。
中央で寄り添ったまま、少し眠った。
霧が山の気配を消し、ひどく静かだ。
夕方、羆の足音で目が覚めた。
体をテントに擦り付けられると、泣き叫びたくなるが、どうにか耐えた。
帰りたい。二人は思った。
羆はなぜ、襲ってこないのだろう。
十日目。
朝、相変わらず霧が濃い。
午後、薄日が差した時に、峰野が立ち上がって、高山に言った。
「今がチャンスだ。俺は出て行く」
高山は、もう止めなかった。
みんな出て行って、高山一人になった。
高山は、霧が晴れるまでは、動かないと決めていた。
羆は夜遅くに来た。
高山の脳は凍り付き、思考が停止した。
十一日目。
やっぱり霧が濃い。
羆はいた。甘いすえた臭いがしていた。
十二日目。
依然として霧が濃い。
パーティーの登山届は、事前に警察に提出されていた為、異常事態は発覚していた。
しかし、稀に見る悪天候に、帯広警察署は捜索を考えあぐねていた。
その後、天候が復活し、発見されたのは、無人のテントと荒らされた荷物だった。
高山の日記も見つかった。
最初に出て行った森山健太は、テントから五十メートルほどのところで、腹を食われた遺体で発見された。
喉の傷が致命傷となり、即死状態だった。
次に出て行った岩崎岳夫は、登山道の途中で、崖から滑落した遺体で発見された。
山口宏樹は、一キロほど離れた笹薮で、無残に食い散らされ、土が掛けられていた。
羆は獲物に土を掛けて、隠しておく習性があるのだ。
峰野大輔は、巻き道の崖下から、遺体で発見された。
高山拓真は、未だに行方不明である。
なかなか忙しくて投稿ができません。
気持ちが落ち着かないと言った方がいいかもしれません。
なので、延び延びになっていた短編小説「羆霧(くまぎり)」を明日掲載します。
もう少し時間をください。
したっけ。