『黒い森の乙女』スウェーデンの民話
「赤ずきん」の原型-1-
女の子は、おばあさんに言われた通り、テーブルの上にあった、おいしい肉と、ワインを食べました。ベッドの中のおばあさんは、女の子を呼びます。
「おばあさんのベッドの中に来てくれないかい?裸になっておばあさんを暖めておくれ」
女の子は、着ていた服を一枚一枚脱いで、暖炉にくべて、裸になると、おばあさんのベッドの中に入りました。でも、ベッドにいたのは、おばあさんの格好をした、狼だったのです。驚く女の子に、狼は、言いました。
「馬鹿な女の子。さっきお前が食べたのは、俺が殺したお前のばあさんの肉。ワインはばあさんの血だ。そしてお前は俺が食べてやる」
狼は、そう言うと、女の子を頭から、ばりばりと食べてしまいました。
『おばあちゃんの話』フランスの話
「赤ずきん」の原型-2-
「さあ、この熱々のパンとミルクを一瓶、お婆ちゃんところへ届けておくれ。」
そこで女の子は出かけて行き、四つ角のところで狼憑きに出会いました。狼憑きは女の子に言いました。
「おい、どこ行くんだい?」
「熱々のパンとミルクを一瓶届けに、お婆ちゃんとこへいくところ・・・。」
「どっちの道を行くんだい?」と、狼憑きは訊きました。
「縫い針の道かい? それとも留め針の道かい?」
「縫い針の道よ」と、女の子は答えました。
「そうかい。じゃあ、俺は留め針の道にしよう。」
女の子は道すがら縫い針を集めて遊んでいましたが、その間に狼憑きは お婆ちゃんの家に着いて、お婆ちゃんを殺したのです。そして肉を戸棚にしまい、血は瓶に入れて棚の上に置いて、お婆ちゃんの服を着てベッドに入ったのです。そのうちに、女の子がたどり着いて戸を叩きました。
「押したら開くよ。」と狼憑きは言いました。
「濡れた藁一本で、閉じてあるだけだからね。」
「こんにちは、お婆ちゃん。熱々のパンとミルクを一瓶、持ってきたわよ。」
「戸棚にしまっておくれ。中に肉が入っているからそれをお食べなさい。それから棚の上のワインもお飲みなさい。」
女の子が飲んだり食べたりし終わると、側にいた小猫が言いました。
「うえーっ、自分のお婆ちゃんの肉を食べて、血を飲んじまったよ。なんて恐ろしい娘っ子だ!」
「さあ、お前、服を脱いで、私を温めておくれ。」
と、狼憑きが言いました。
「早くここに来て一緒にベッドにお入り。」
「脱いだスカーフは、どこへ置けばいいの?」
「暖炉の火にくべておしまい。もうお前にはいらないんだから。」
「暖炉の火にくべておしまい。もうお前にはいらないんだから。」
「脱いだシャツは、どこへ置けばいいの?」
「暖炉の火にくべておしまい。もうお前にはいらないんだから。」
「脱いだスカートは、どこへ置けばいいの?」
「暖炉の火にくべておしまい。もうお前にはいらないんだから。」
「脱いだペチコートは、どこへ置けばいいの?」
「暖炉の火にくべておしまい。もうお前にはいらないんだから。」
「脱いだ長靴下は、どこへ置けばいいの?」
「暖炉の火にくべておしまい。もうお前にはいらないんだから。」
しまいに女の子は裸になって、狼憑きと同じベッドに入ったのです。
「あれー、お婆ちゃんって、毛深いのね。え」
「この方があったかいんだよ、お前。」
「あれー、お婆ちゃんの爪って、大きいのねえ。」
「この方が体を掻くのにいいんだよ、お前」。
「あれー、お婆ちゃんの肩って、大きいのねえ。」
「この方が薪を運ぶのにいいんだよ、お前。」
「あれー、お婆ちゃんの耳って、大きいのねえ。」
「この方がお前の声がよく聞こえるんだよ。」
「あれー、お婆ちゃんの鼻の穴って、大きいのねえ。」
「この方が嗅ぎタバコを嗅ぐのにいいんだよ、お前。」
「あれー、お婆ちゃんの口って、大きいのねえ。」
すると女の子は言いました。
「あれー、お婆ちゃん、あたしおしっこがしたくなった。外へ行ってもいいでしょう。」
「そんなの、ベッドの中でしておしまいよ。」
「イヤだよ、お婆ちゃん。外に行きたいよ。」
「わかったよ。だけど、さっさとするんだよ」
狼憑きは女の子が逃げないように足に毛糸をくくりつけると、外へ出してやりました。女の子は外へ出ると、毛糸の端を庭のスモモの木に結んだのです。狼憑きはあんまり時間がかかるのでイライラしてきました。
「お前、大きい方なのかい。たくさん出しているのかい?」
と聞いた。返事がないのに気づいた狼憑きはあわててベッドを飛び出しましたが、女の子はもう逃げてしまっていました。そこで狼憑きはあとを追いかけたが、すんでのところで女の子は自分の家に逃げ込んで、バタンと戸を閉めました。
※狼憑きとは、狼に憑依(ひょうい)された人間の男性のことです。
※この物語は宮廷を中心とするサロンの女性たちのために書かれたものであったため、下品なシーンや残酷なシーンなどが多いのだそうです。
服を脱いでいく場面はストリップのようです。
また、婆ちゃんの肉を食べるなど、カニバリズム的要素も含んでいます。
※「女の子の家庭に父親が不在であること」「そしてお婆さんが近隣に他の家がないような場所に住み、近くを通りがかったのは狼憑きであった」などという点から、飢饉が続いた近世の初期、口減らしのために山に姥捨てにされたお婆さんのところまで内緒で食料を届けに行っていた少女の家庭環境や時代背景に絡め作られた話なのではないかと推測されているそうです。
※この話で女の子は「赤ずきん」は被っていません。狼に食べられることもありません。
※狼に食べられる話は「七匹の子羊」からの引用らしいのです。赤ずきんは言いつけを守らなかった自分を悔い、反省していい子になる。など、グリムでは随分と削除または変更されています。また、「赤ずきん」の裏には子供から大人へと変身する月経を暗示しているとも言われています。
※「赤ずきん」はレイプの寓話です。それも少女レイプです。森の中には恐ろしい男たちがうようよしています。私たちは彼らを狼と呼んでいます。彼らの前では、女性は無力です正しい道からはずれないほうがいいのです。冒険心はもたないほうがいいのです。
もし運がよければ、善良で友好的な男性が、あなたがた女性をある種の破滅から救ってくれるかもしれないからです。
したっけ。
興味深い内容だったので、コメントさせていただきました。
一般的な赤ずきんしか知らなかったのでびっくりしました。
「黒い森の乙女」の本は出版されているんでしょうか?
読んでみたいので、もし、よろしければ教えてください。