北海道昆虫同好会ブログ

北海道昆虫同好会は北海道の昆虫を中心に近隣諸国および世界の昆虫を対象に活動しています。

ニューギニア島アルファック・トリバネチョウ採集記  その八

2016-04-25 21:01:36 | 採集記・旅行・写真
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ニューギニア島アルファック・トリバネチョウ採集記
~西パプア(旧:西イリアン)・トリバネ事情~

             その八

                   中川忠則


トリバネチョウの雑種と個体変異について

J氏は、飼育販売の傍ら、トリバネチョウの交雑に熱心である。




氏は現在、ロスチャイルドとプリアムスの雑種であるタカネトリバネ(O,akakeae)を作出。

飼育ケージ内において、その幼虫を観察することができた。




目下、若齢幼虫を約20数頭ほど飼育しているとのことであったが、その価値については「エキスペンシブ」とだけ言って、教えてはもらえなかった。


それでも、特別にJ氏のスマートフォンに収録された御家族と自慢のゴライアス×パラディシア、ロスチャルド×チトヌスの交雑個体のほか、プリアムスの前翅に金色を配した個体や無紋の異常型等を見せてくれた。





ニューギニア本島のプリアムスの亜種は全てポセイドンとされるが、ここに来て、実に変異が多いと感じた。

図鑑や日本で入手できる個体の多くがノーマル個体であるが、アルファクの高地帯だけでもバリエーションがあり、低地帯産とも異なっているという。



筆者が購入したポセイドンには後翅に黄色の斑紋が現れていた。


J氏が手招きしてプリアムスの様々な異常型を奨めてくれたが見送った。

予算と時間が許せば、ゆっくりと選びたいところである。

氏のこだわりの品は、いずれも高値で取引きされるようであるが、どうやら、顧客のニーズと懐具合をみて、一つひとつ交渉して決めているようである。



西パプア(旧:西イリアン)随想

マノクワリは、近年、モータリゼション著しく、日本製のオートバイが飛躍的に増えているという。

信号は主要箇所を除いてほとんど無く、交通ルールはいったいはどうなっているのかはわからないが、車とオートバイが両脇から進入してくる。


このため、いつでも、どこでも、クラクションで牽制しながら走行することになるのである。

しかし、どんなにクラクションを鳴らしても、飛び出して来る犬や豚とのクラッシュを避けることはできないようだ。

ニューギニアというと原始的な生活をイメージしてしまうが、今や最新の日本車が走り、町にはレストランやスーパーマーケットもあるので、特に生活に不自由を感じさせない。

市街地の照明もLED化が進んでいるようである。また、アルファックに向かう途中、ジャカルタ大手企業とセクターのパームヤシ農園に暮らす人々の暮らしも安定しているように見えた。

ここに来て、私のニユーギニアの印象はすっかり変わってしまった。

宗教について少々注目すると、インドネシアの国教は回教であるが、西パプアはオランダの植民地時代を経てインドネシアの移民政策により併合、幾多の分離独立運動があったと誌されているが、寛容政策により平穏が保たれている。

当地域はクリスチャン人口の占める割合が多く、コミュニティーにはプロテスタントの教会とモスクとが共存している。


イスラム教のモスク。


キリスト教の協会。

ガイド曰く、「両者は大変友好的でトラブルは無い」とのことであるが、更なる近代化と不穏な国際情勢のもと、トリバネチョウ舞うこの地が、けっして紛争に巻き込まれることの無いよう心から願った。

また、西イリアン地域住民の飲酒は禁じられているが、旅行者とスラウェシ島から随行のガイドの飲酒は問題ないとのこと。

回教国ゆえ禁止と聞いたことがあるが、どうも矛盾するので尋ねてみると、当地方の原住民は飲酒の節度に欠け、お酒によるトラブルやアルコール依存症が憂慮されるとして、現地人に対し禁酒法を施行しているのだと云う。

そんな、マノクワリの人々であるが、皆穏やかで誰もが笑顔で接してくれる。

どこかの国のように、街角で罵り合う光景を目にすることはなかった。


                この項、続く。





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ニューギニア島アルファック・トリバネチョウ採集記  その七

2016-04-25 00:34:18 | 採集記・旅行・写真
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ニューギニア島アルファック・トリバネチョウ採集記
~西パプア(旧:西イリアン)・トリバネ事情~

             その七

                   中川忠則






トリバネ・ビジネスについて
最終日の午後は、標本商J氏の事務所で昆虫標本の購入が予定されていたので、早めの下山、これまで、通り過ぎていた河原のポイントで、ミナミミカドアゲハ、パプアアゲハ、キララシジミなどを追加することができた。

パプアアゲハ。

ここで、標本商J氏のトリバネ・ビジネスについて紹介する。

冒頭、トリバネチョウはずいぶん流通したと記述したが、なるほど、J氏の量産体制に驚かされてしまった。

羽化を待つトリバネチョウの蛹がズラリと並んでいる。

飼育ケージの蛹の数もさることながら、自宅兼事務所においても、常時大量の羽化が見られ、まさに、収穫と云った感じで、標本の乾燥にも工夫がこらされていた。

トリバネ幼虫。



ゴライアストリバネ幼虫。

データ管理やサイテスの手続き等、まさにプロの仕事である。

トリバネチョウ(全てペア)の価格については、現在、ゴライアス:30ドル(現レートで約3千円)と、かつては何十万円もしていたのに、ほんとうに安くなってしまった。

パラディシア:150ドル、チトヌス:85ドル、ロスチャイルド:13ドル、プリアムス:6ドルとなっており、たくさん購入することで値切ることができるようである。

ただし、良いものには強気である。

なお、J氏の営業範囲は、西イリアンと周辺の島嶼のようで、パプアニューギニアやセラムは含まれていない。

ティミカ産のメリディオナリス:250ドル(日本価格とあまり変わらない。)やパラディシアの別亜種も扱っているので、筆者は、マノクワリ低地帯に産するパラディシア・クリサンセマムを購入することにした。

ちなみに、生態時のパラディシアはバニラの香を発することで有名である。

今回、M氏が採集した際、嗅がしてもらったが、筆者の三角紙のクリサンセマムもまた、良い香りに溢れていた。



  採集許可とサイテス(ワシントン条約)について




海外採集の常識であるが、国内のように自由に採集することはできない。

今回、採集許可手数料は、旅行費用とは別に1人150ドル、許可書には許可ポイントが記されており、同ポイント以外勝手に行動することはできない。

また、現在、西パプアにおける採集許可申請窓口はJ氏のみで、同時にサイテス証明証の発行の権利を有しているのも彼以外いない。

ほぼ独占企業の状態なので、サイテス許可も相当の標本購入が条件となっている。

ただし、今回、トリバネを購入しないメンバーへのサイテス手数料の負担はなかったので、購入者割りとなった。

なお、採集品及び購入品のトリバネチョウとキシタアゲハは正規の輸出扱いのため、各自、三角紙に氏名を記載の上、一括してサイテス証明書が添付された。後日、日本の税関を経由して「月刊むし社」へ送られ、一ヶ月後、無事メンバーの元へ届けられた。


        この項、続く。

 


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