「世の中、ちょっとやぶにらみ」

本音とたてまえ使い分け、視点をかえてにらんでみれば、違った世界が見えてくる・・・かな?    yattaro-

「オヤジの背中」

2021年01月16日 | 趣味・・エッセイ

                  

長く忘れていたオヤジの背中。というか、実際にはあまり意識して見たことがなかった、というのが正直なところだろうか。
自分が幼いころの父親、お父ちゃんは、どちらかというと反面教師的なイメージが強く、少し抵抗を感じる部分が多かった。その分、おふくろが頑張ってくれているなぁという記憶の方が強い。「大きくなったらお母ちゃんに楽をさせたい」と思う子供であったようだ。

それでも、晩年のオヤジの背中は、やはりどことなく切なくて「色々あったけど、あんたはあんたなりの一生を精一杯生きて来たんだよね~」と言いたくなる、男の哀愁を感じていたような気がしないでもない。キザな言い方かもしれないが。それは、やはりこちらも段々大人になっていく中で、男の生き方について少しは周りが見えてきて、得体の知れない寛容さというものが芽生えてきたせいなのかも。

いずれにしても、12月も押し迫って店頭に「しめ飾り」が並び始める季節を迎えると、どうしてもオヤジの後ろ姿が思い出されて、ちょっとだけセンチに襲われることがある。
そんな気持ちの一端を、趣味として楽しんでいる252字にまとめてみた。それを昨年暮れに毎日新聞「はがき随筆」に投稿したところ、図らずも久しぶりにお褒めの言葉を頂くことになった。
「こいつぁ春から・・・・・・」 犬も食わない自慢話、手前味噌で恐縮ながら、ちょっとなぞらせて頂くわがままをお許し頂きたい。

   「父のボーナス」

   「ストーブの火はワラの色を変えるからダメ」と職人気質丸出しの父は、
   火の気のない寒い部屋で背中を丸め、しめ縄を綯い上げていく。
   母も妹も新婚早々の私の妻も、かじかむ指で一つ一つ丁寧に商品に仕上げる。
   100、200とまとまったら私の出番。
   会社は有給をもらい、正月準備で賑わう通りの道ばたに露店を張る。
   所得倍増の好景気に押されて飛ぶように売れる。
   苦労などなかったような父が笑顔で年越しそばをすする。
   賞与なんてもらったことのない70才前の父に、家族総出の賞与を贈る。
   遠い昭和を思い出せる年の瀬である。      
                        おそまつさま!    

コメント
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