午後の陽ざしに誘われて、最も近くにある船だまりに出てみた。「海のある風景」を1枚どうしても撮らなければならないお役目もあった。
海は空の青さを映して底抜けに青く、色んな形をしたレジャーボートは冬の陽ざしでも目を射るが如く白く輝いている。
遠くの対岸に目をやると、その昔、そして今も我が生活を支えてくれる工場群が、白い煙をなびかせている。ついこの前まで冷たい海上を渡る風は冴え切っていたようで、見える景色も鮮明であったのに。今日は何故か少し霞んで見える。まさに水温む季節を予感させる。瀬戸の海の上にも春隣。
車窓より瀬戸の島山春隣 星野立子
今は捨てられたように波間に漂う小舟も、時を得ると一斉に白波を立てて釣り場に向かう。そこにはコロナも世間の煩わしさもない別世界が待っているのだろう。
小さな目的を持って出かけた瀬戸の海、小さな船だまり。そこにはそこの物語があるような。
何をやっても許される、そして楽しめる、そんな春が早くやって来るといいものを。なかなかしぶといコロナが立ちはだかる春隣でもある。