ー何故 源氏物語は書かれたのか?ー
現実と物語が重なり合って進みます
一説によれば 藤原道長は屋敷の女房達を一度は味見されたとか
それも役目と都合良く思っていたフシもあるのだとか
多情多恨
精力絶倫なのか稀に見る色魔か
権力かさにきた困ったオジサンか
屋敷で働く女性には迷惑な話だったかもしれません
映画の冒頭
庭を逃げる紫式部(中谷美紀) しつこく追いかけ捕まえる藤原道長(東山紀之)
背後から紫式部を捕らえ申します「諦めなさい わたしは何をしても許される身なのだ」
まぁ確かに屋敷のご主人様でもありますが
屋外でねぇ
誰が見るか判らないのに大胆(恥知らず)ですこと
事が終わりしどけない姿
道長「いつかそなたの書く物語を読ませてくれ 男と女の物語だ」
見つめあい 寄り添う二人
やがて紫式部は紙を与えられ
「我が天下を治める為に 娘彰子が帝に飽きられぬよう物語を書け」と道長から命じられます
もしや道長 己のスケベ心と 紫式部に物語を書かせる為にと 強引な色仕掛けを企んだのか
食えないオジサンである
そうして紫式部が書いた物語世界へ場面は移る
身分がさほど高くはなかったが桐壺帝(榎木孝明)から寵愛受け 桐壺更衣(真木よう子)がいる
他の女御から執拗なイジメを受け寿命を縮めるのだが 特に帝の第一の妃の弘徽殿の女御(室井滋)は凄まじかった
ゆえに桐壺更衣は男子を産むや間もなく儚くなってしまう
彼女の死より三年間 帝は暗い世界をさまよう
母に死なれた光には不憫がかかり 可愛いがります
帝は桐壺更衣に生き写しの藤壺(真木よう子)を妃に迎えました
光は母によく似た藤壺になつきます
光は稀代の貴公子(生田斗真)に育ちます
現実の道長 物語読み「我が意を得たり」ふふふーと笑う
物語世界では光 元服します
弘徽殿の女御の子は東宮に
桐壺帝は後ろ盾ない光のことを案じ
我が子ながら臣下として 源氏の姓を与えます
弘徽殿の女御 喜びます
身分低い女が産んだ子なんか 臣下で当然よと高笑い
弘徽殿の女御は身分高い女性ですから 高島礼子さんあたりが お似合いかと思うのですが
意地悪い中にも 愛されなかった女性の悲しさ 寂しさ
が ここは室井滋さんの怪演でした
臣下に落としたことで桐壺帝は悩みます
源氏に恨まれているのでは?
「私はいつまでもお傍におります」
藤壺 帝を慰めます
現実世界で道長「早く続きが読みたいものよ」
式部「勿体無いお言葉を」
道長「わしとて そなたの虜だ そなたの書く物語に すっかり心を奪われておる」
夜の廊下進む紫式部を庭から道長かきくどきますが 「おやすみなさい」とかわされます
夜道を乗り物の中にいる道長と藤原行成(甲本昌裕)
屋根の上に怪しい影があります
怪しい者は飛び降りてきました
供の者達はうろたえ騒ぎますが
道長 冷静です
正体見極め闘います
道長の兄 道隆の息子これちか
道長の企みにより 既にこの世の者ではなく 怨霊として留まっているのでした
安倍晴明が現れ怨霊は姿を消します
安倍晴明の屋敷は落雷受けたり 落ち着けぬ場所なので 道長の館で飲むことに
堅物の行成
晴明(窪塚洋介)が出した式神の女性二人に驚きます
式神 行成で遊んでいます
物語世界では 源氏 妻を娶ります
親友 頭中将(尾上松也)の妹 葵上(多部未華子)
母親から余計なことを吹き込まれていることもあり なかなか打ち解けてくれません
身分高く玲瓏とした美貌と聡明さが評判の年上の女性 六条御息所(田中麗奈)のもとへ通うようになります
六条御息所は源氏の君が訪れ 嬉しいと思う自分の気持ちをあさましく思ったりしておりましたが 源氏の君への想い 愛情に流されていきます
年下の若く美しい男
賢い彼女のこと
いつかは終わる恋と わかってはいたでしょう
それでも思うに任せないのがー人の心というもの
ーああ このわたくしとも あろう者がー
現実世界では 男御子が生まれ「彰子でかした」と喜ぶ道長
晴明は紫式部に凶相が出ていると道長に告げます
源氏の君は ふとしたことで知り合った夕顔(芦名星)に心安らぐものを覚え 少し六条御息所から足が遠のいていました
源氏の君への恋しさ募る六条御息所は鏡を見るうち ふうっと体から何か不思議な感じになりー生き霊となって身体から離れてしまいます
気がつけば 愛おしげに夕顔を抱く源氏の君を見下ろしておりました
ーあなたの愛を信じた わたくしが情けない ー
怨霊に怯え 夕顔は死んでしまいました
現実世界で 紫式部は語ります「女ぎみは修羅の心を隠すのがお上手 とかくそれを男ぎみは分からないものなのです
物語世界にて
頭中将は源氏の君に 妹 葵上を訪ねてくれと頼む
寂しいと泣きつくことが出来ない可哀想な女なのだ
帝の妻となるべく育てられたので 誇りばかりが高い
しかしながら藤壺が宮中を離れていると知ると そこへ押しかけてしまう
義理の母たる その人を
亡き母生き写しのその女性を 源氏の君は 慕っていた
彼は言う「諦めて下さい わたしは何をしても許される身なのです」
藤壺「わたくしは あなたの母なのですよ」
源氏「夢の中でも お会いしたいと願った ただ一人の女性なのです」
藤壺の言葉に このたびは引き下がった源氏ではありました
舅から葵上の妊娠を教えられた源氏 喜び屋敷に駆けつけます
「わたくしは母親の記憶がありません
これから生まれるわたくしの子は 存分に母であるあなたから愛されましょう
それを見て漸く わたくしは解き放たれるのです」と源氏
続けて「葵上 これからは悲しいことも恨み言も 存分に言って 打ち解けた夫婦になりましょう」
葵上「ええ あなた」
源氏「少しお痩せになりましたね 面やつれしたその顔が いっそう美しい」
他の女性にもそのようなことを言うのかと尋ねる葵上
源氏「安心して下さい わたくしはずっと傍におります」
頷く葵上「ええ ええ」
御簾の向こうへ六条御息所の生き霊が来ている
現実世界で道長「恐ろしい女であるなぁ 六条御息所は一体どこまで源氏を追い詰めるのだ」
紫式部「書きながら初めて ああ この者は こう動くのだと分かるのです」
だから書く前は分からないと話す紫式部に
道長「ほんに恐ろしい女であるなぁ そなたは」
彰子が男子を産んだ時点で物語を書く目的は達せられたのに 今となっては無用な物語を何故 書き続けるのだと道長
紫式部「まさかそれが分からない あなたさまでもありますまい
遂げられぬ想いが わたくしに筆を持たせるのでありましょう」
物語世界で六条御息所へ会いに来た源氏へ 六条御息所「けれど! 愛されてないお方が どうして 孕まれたのでございましょう」
葵上が苦しんでいる
ーいかようにしても物の怪は離れぬのだー
護摩焚きが行われ僧侶達が祈っているのだが 効き目はさほど無い模様
現実世界から異変に気づいた安倍晴明が物語世界へ現れ 呪を唱え始める
晴明「そなたの修羅は これほどのものなのか」
いったん生き霊を撃退
現実世界に戻った晴明は道長に言う
「道長様に益をもたらした女
あの修羅を止めるのは道長様しかおりません」
道長「われは見たいのだ 式部の行き着く先を
才の全てを 業の深さを」
晴明「我が身に害が及ぼうとも」
道長「あの者の才を呼び覚ましたのは この私なのだからな」
葵上 出産する
男子誕生
六条御息所ー何故 罌粟の匂いがとれぬ とれぬのじゃ
ー
髪を洗い続けている
出産終え眠る葵上 その部屋へ 六条御息所 また現れる
「苦しいか わらわはもっと苦しんだのだ もっともっと苦しみ抜いたのだ
起きよ まだまだそなたには苦しみが足りぬ 起きよ」
再び物語世界へ晴明「恨みはやがて我が身に返る 御息所よ もう止めるのだ」
六条御息所「もはや あの方に愛されぬこの身など どうなっても構わぬ
死して煉獄をさまよってもかまわぬ
あの人はわたくしの命 わたくしだけの命」
葵上に覆い被さり六条御息所「これで 終わりにしてくれる」
葵上 死ぬ
訪ねた源氏に六条御息所
「お出でになるのは あなたの優しさからですか
浅ましい鬼となり果てた このわたくしを」
源氏「全て私が悪いのです」
六条御息所「その言葉で 都を離れる決心がつきました
あなたはまだ若い
優しい方を見つけて下さいな
くれぐれもわたくしみたいな情のこわい女には 気をつけるのですよ」
源氏「初めから 何もかも 初めからやり直せるのです」
六条御息所「何度繰り返しても同じこと
わたくし達はまた 同じ過ちを繰り返すのです」
静かに彼女は別れを告げる「さよなら あなた」
嵐の夜 とうとう藤壺と過ちおかす 懲りない男 源氏
「わたくしにとって あなたの代わりなど どこにもいない
葵上も夕顔も あの方(六条御息所)も
その事を お伝えしにまいりました
もう二度とこのような振る舞いは致しません」
そう告げ 去ろうとする源氏に 藤壺 言ってしまう
「愛しいあなたを地獄に落とすことは出来ない」
源氏「もう 堕ちている」
外では王命婦(佐久間良子)が「この悪夢は この一夜の夢で終わるのですか
それとも 新たな悪夢の幕開けになろうというのですか」
程なく藤壺懐妊し桐壺帝喜ぶ
男子が生まれ 桐壺帝は源氏に「ご覧 美しい子であろう
そなたの幼い頃に恐ろしいほど似ておる
きっと美しい者は 似るものなのであろう」
東宮を朱雀帝にし退位した桐壺帝は 病になる
もとの桐壺帝「わたしはもう疲れたのだ
思い残すことはない
光 ただ そなたのことだけだ
数ある子の中で そなたは一番優れた子であった
どうか幼い東宮を守ってやってくれ」
元の桐壺帝は死ぬ
藤壺「わたくしは 亡き院が わたくし達の罪を全て知っておられた
その上でわたくし達の子を東宮になされた
わたくしは その思いを守りたいのです」
現実世界では 紫式部が 里へ帰ろうとしていました 「娘が待っております 早くに父親が死に 長らく寂しい思いをさせました」
道長「われは寂しゅうなるなぁ
そなたの物語が読めなくなると思うと
張り合いが無くなるわ
その後 源氏は どうなるのだ」
紫式部「源氏の君の人生は まだ始まったばかりなのです」
「遠くより見守っております
これからもこの世の栄華を極められるあなた様を」
紫式部は去っていく
源氏の人生は道長と同じように難儀なものであることを告げて
見送り道長「そうよ われの名は光
世をあまねく照らす光だ」
道長 晴明 行成らと月を見ながら酒盛り
道長「まことに美しい月よ われもあと幾度このように月を眺められることか
われはどれくらい生きられる」
晴明「それは わかりませぬ」
道長「相変わらず役に立たぬ男よ」
晴明「道長様 あなたはやはり運の強きお方
あの女(紫式部)が鬼となる前に自ら身を引くとは」
道長 一首詠む
ーこの世をば 我が世とぞ思う 望月の かけたることの なしと思えばー
物語世界では藤壺が出家し 源氏 会いにくるが かなわない
物語世界と現実世界が重なり合いー
橋の上で源氏 紫式部に言う
「どこまで わたしを苦しめるのだ」
紫式部「まだ お分かりにならぬのですか
多くの人間をひきつけ 愛されるあなたは 恵まれた その幸せの分だけ
より多く血を流すのです」
見終わって どこが 誰が印象に残るかと言えば
最初の登場場面から田中麗奈さん
ちょっとした仕草 表情で 六条御息所の感情を よくあらわしていました
生き霊化してからも 演出もあるのでしょうが
凄み迫力 悲しみ 諦め 寂しさ
「さよなら あなた」まで 良かったです
これはあくまで「源氏物語」が何故書かれたかーって話で 「源氏物語」としては 紫上も出てこない
抜粋のようなものです