夢見るババアの雑談室

たまに読んだ本や観た映画やドラマの感想も入ります
ほぼ身辺雑記です

湊かなえ著「白ゆき姫殺人事件」集英社

2012-10-16 23:34:02 | 本と雑誌

湊かなえ著「白ゆき姫殺人事件」集英社
湊かなえ著「白ゆき姫殺人事件」集英社
湊かなえ著「白ゆき姫殺人事件」集英社
湊かなえ著「白ゆき姫殺人事件」集英社
美人の評判高き女性が殺された
刺されて燃やされて
被害者と同じ会社の女性から 情報提供受けた記者は関係者に話を訊いて回る

被害者は罪無き美女だったのか

伝聞 噂 真実は 何処にある

真犯人の逮捕によりーめでたく容疑が晴れる女性もいるのだが 私はその女性の性格も 好きにはなれなかった

先日 テレビ番組で 湊かなえさんは 映像化できない小説を書きたいと言われていた

逆にこの作品などは 二時間ドラマ向きかと思われる


「繭の見る夢」ー恋・1ー

2012-10-16 08:32:51 | 自作の小説

大学を出て父親の事務所に入り いつか父親が引退したら 後を継ぐ
安定した将来で 羨ましいと思う人間も多いだろう
逆に何の面白みもない人生かもしれないと松山透一郎は思うのだった

祖父も父も弁護士
透一郎は三代目になる

それは遅れてやって来た反抗期だったのか

透一郎は 終わりの見える生き方が ふっと空しくなった

勉強する 成績が上がる 親が喜ぶ 褒めてくれる 褒められれば嬉しい

目標とする大学に入り 単位をとり

透一郎の父親は 躾・教育など妻任せで 日頃 何か言う人間でもなかったが 夏休みに入ると事務所でアルバイトするよう言いつけた

書類を届けるだけなら 郵便局に任せればいいものを 直接 渡すように透一郎は はるばる山の中まで行かされた

出たばかりのバスは3時間しないと次は来ないと言う

若い透一郎は待つよりも歩いて行こうとした

山の中へ迷い込み 透一郎は不思議なものを見た

見たばかりか 見つけられ追われた

ーあれはいったい何なんだ

逃げるうちに ますます方角も何もわからなくなる

日も暮れてきた

追う者の荒い呼吸音が聞こえる

次に踏み出した先には地面が無かった

ずささっ 透一郎は落ちた
追う者は 落ちる透一郎を追っていく

ざざっ ざっ
落下は止まった
追う者も止まる

透一郎は動けない

追う者が近づいてくる

息がかかるほど 息 嫌な臭いのする息がかかる

びっびっ! 何か撒かれたか

追う者はたじろぎ後ずさる

暫くしてー「大丈夫ですか?」
透一郎に声がかけられた

ゆっくり目を開けた透一郎は白い女の顔を見る

月明かりに浮かぶのは・・・正真正銘の美女だった

「歩けそうですか」 白っぽい着物は時代を超越しているようにも感じられる

女が出した手を取り 透一郎はどうにか立ち上がることができた

山へ女は自動車で来ており 山を海側へと下っていった

板塀の横の蔵のような駐車場へ車を入れて電動シャッターを下ろし 駐車場の中から家の中へ

「まずは怪我の様子を見ましょう」

ソファーに透一郎を腰掛けさせると 手提げ金庫のような薬箱を取ってきた

あちこちにある擦り傷を丁寧に洗い消毒し軟膏をつける

「どこも折れてはいないようですね」

「すみません 有り難うございます 僕は松山透一郎と言います
あの巴弥都真太郎という人の家へ行く途中でした 」

「災難でございましたのね
あたくしは きぬえと申します
お腹空いておられませんか」

暫くして きぬえと名乗る女が出してきたのは ふっくら柔らかに焼けた卵焼き 丁寧に骨を取り除いた白身の焼き魚

薄い輪切りにした胡瓜と海老の酢の物

素麺の味噌汁だった

「いただきます」手を合わせ 箸を取る

やや高台にあるせいか 網戸から入ってくる風は涼しかった

かけてくれた扇風機がカタカタ音を立てる

席を外して きぬえがかける電話の声が透一郎にも微かに聞こえた

「はい きぬの家の者です ええ迷われたらしくって
はい 明日にそちらまで お送り致します
そちらは変わったことは?
そうですか」

普通 電話をかけるとなると女性の声は日常より高くなるが きぬえの声は 少し低くなった

透一郎が知る女性達とは違うタイプで 別世界の生き物のようにさえ 思えるのだった

透一郎が食事を終えると 食器を下げていき 手早く片付けて戻ってきた

「お風呂をと おすすめしたいところですが 打ち身にはよくないでしょう

沸かしておりますが 行水のようになさって お体拭くだけにされた方が宜しいかと」

風呂場へ透一郎を案内すると 棚の上に乱れ籠を置き
「これに お着替えを」

タオルと浴衣を置き きぬえは出て行った

落ち着いて考えれば 自分を襲ってきた者らはー人間だった

異様な風体ではあったが
獣めき 魔物のようでさえあったものの
透一郎は それらへの疑問を きぬえにぶつけてもいいものか判断しかねた

かと言って 明日 会うであろう初対面の巴弥都真太郎に尋ねられることだろうか

乱れ籠には傷用の軟膏も入れてあった

ー行き届いた女性(ひと)だー

自分は きぬえに助けられた
あの時 きぬえが現れなければ自分はどうなっていたのか

きぬえは何故 あの時間 あの場所にいたのか

募る疑問を透一郎は抱えたままに しておけなかった

食事をとった部屋に戻る

廊下向こうの台所からはスイカの匂いがした
きぬえがスイカの皮をむいている

「スイカのジュース飲まれますか?」

「飲んだことは ありませんが スイカは好きです」

脇の冷蔵庫から きぬえが コップに注ぐ

よく冷えていた

「うまい!」

「よろしかったら お代わりどうぞ」

暫くスイカの皮をむき刻むきぬえを 透一郎は眺めていた

刻まないものは ぬか床へ
刻んだものは薄く塩をして 少しおいたら水洗い 容器に詰め冷蔵庫の中へ
むいた緑と黒の皮はバケツに入れてある
「生ゴミは畑に埋めると いい肥料になりますから」

出鼻を挫かれたようで勢い込んだ気持ちは 宙ぶらりんになっていたが 透一郎は若い
まして腹芸など出来るはずもなく 真っ直ぐに尋ねてしまう

「あなたは一体 何故あの場所へ現れることが出来たのですか
そして 山にいた あの人間達は どういう者らなのですか」

「山菜採りで遅くなったーと言っても信じては 貰えませんわね」
優しく きぬえは笑った

親切な女性の正体が 夜中に包丁研ぐ鬼婆であったーそんな話もあるのだと透一郎は思ったりもする

「山のあれらは 我が一族にかかった呪い
山の墓地には 禁忌の水とも呼ばれる泉があります
生きた人間が飲めば 人では無くなってしまう 餓鬼に
飲んでしまった人間はーもう人ではなくなったーと自ら思い込み 存在していない呪いにかかるのです
ある者は熊になったと思い込み 人間を襲い ある者は自分を蟷螂になったと信じたり  

 あたくしは午後から何か嫌な感じが強くなってきて 見回りに出掛けたのです

あたくしには巫女のような 一族の中のそういう血が流れているのです

その為の勉強のお陰か 多少は呪いを祓えます
跳ね返せます」

 

 

全て本当の事を言っているとは 透一郎にも思えなかった
ただ初対面の相手に話せるギリギリのところなのだろうと思い それ以上は突っ込んで問えなかった

「今夜は どうぞ お泊まり下さい
明日の朝 お送り致します」

何故 父が選んで書類を巴弥都家へ 透一郎に持参させたのか 彼には何となく分かったような気がした
レール
汽車だって脱線する 事故もある

レールがあっても 運転するのは人間

出会い 別れ
一つとして同じモノは無い
奇妙な夜 奇妙な1日
これからだって きっと もっと奇妙な事と 出くわすのかもしれない

当たり前の事の 当たり前さはー何を基準にはかれるものか

ゆらゆらと穏やかな波の上の小舟のように 透一郎の思考は漂い流れる

やがて・・・・・疲れが睡魔を呼んだ

朝 鰹節やら味噌汁の匂い
何か甘辛い煮炊きする匂いが胃袋を刺激し 透一郎は目が覚めた

起き上がり障子を開けると 廊下に彼の昨夜着ていた服が洗濯されアイロンかけて きちんと畳まれて乱れ籠に入れてあった

山を落ちた時にできたかぎ裂きや破れも 目立たぬよう綺麗に繕われている

中庭には朝顔や百日紅の花が咲いており 畑もあるのだった

カタカナのコの字形に廊下が庭を囲んでいるように見える

透一郎は身支度を済ませ 匂いに誘われるように台所を見つけた

着物の上に長めの丈の割烹着 長い髪は編んでまとめてある

「あら おはようございます」

口元に微かな笑み

朝見ても やはり美しい女性だった

昨夜の話通りに 食事が終わるときぬえは透一郎を巴弥都真太郎の家まで送った

巴弥都本家の建物の前で透一郎を車から下ろし「では ここで 」別れの挨拶をした
「色々お世話になり有り難うございます」
透一郎の言葉に笑顔で会釈

じきに車は遠ざかり見えなくなる

大きな松の横の門には呼び鈴があり 透一郎はそれを押した

程なく背の高い男が迎えに出る

それが巴弥都真太郎( はやと しんたろう)だった

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー関連作です↓読んでいただければ嬉しいです

「愛しいあなた」

http://blog.goo.ne.jp/yumemi1958/d/20120818

「堕恋」-もしくは繭の見る夢・序ー

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「禁忌の水」

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「繭の見る夢」-1-

http://blog.goo.ne.jp/yumemi1958/d/20120819

「繭の見る夢」-1´ー

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「繭の見る夢」-2-

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「繭の見る夢「-2´ー

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