ON  MY  WAY

60代になっても、迷えるキツネのような男が走ります。スポーツや草花や人の姿にいやされながら、生きている日々を綴ります。

「打ち返す力 最強のメンタルを手に入れろ」(水谷隼著;講談社)

2022-01-04 21:39:45 | 読む


東京五輪の卓球・混合ダブルスで伊藤美誠選手と組んで、見事に中国選手ペアに勝って金メダルを獲得した水谷隼選手。
彼の著書については、以前「卓球王水谷隼 終わりなき戦略」を読んだときにここで紹介した。
今回読んだのは、東京五輪で金メダルを獲得した後に著した本である。
「打ち返す力 最強のメンタルを手に入れろ」という書名である。

水谷氏は、今まで3冊出した本は、卓球経験者向けに書いていたが、今回の「打ち返す力」は、一般読者向けに書いた本だと自ら紹介していた。
なるほど、確かに彼の言うとおり、卓球という競技は、技術はもちろんだが、心理戦でもある。
最終的にはメンタルの要素が強くものをいうスポーツだ。
そんな水谷氏が卓球競技を通じて得た経験と哲学は、卓球競技者だけでなく一般人に対しても、普遍的な汎用性がある。
そう彼が主張するが、そのとおりだと共感する。

なにしろ、彼は、自らの意思で進んで14歳で単身ドイツに卓球留学した。
スマホもない時代に、すべてを断ち切って卓球で強くなるために日本を飛び出したのだった。
すべてを卓球に向けるために、中学や高校の卒業式はおろか文化祭なども一切出ていない。
そういうことができるだけでも、心の幹が太い人だと思う。
東京五輪のフランスペアとの戦いでの最終ゲーム2-9からの大逆転劇や、決勝で2ゲームをとられてからの中国ペアに対する逆転勝利は、心が強くなければ成し遂げられない。
どうすれば、どう考えてそんなことができたのか、それらを私たちが知るだけでも生き方の大きな参考になる。

また、ビジネスマンに対しても、具体的に助言になることを伝えてくれている。
何年か前から「水谷隼カレー」という商品が、売られているが、彼はそのカレーの味についてもしっかり注文を付けている。
そして、食べてみて自分がおいしいと自信をもって言えるように改善を重ねてもらって、納得の味になってから販売のOKを出したのだという。
自分が納得いかなければ妥協しない、という生き方を見せてくれている。
最後の章には、「ビジネスマンの悩みに答える」というQ&Aのコーナーもあるくらいだ。

彼が正々堂々と生きている姿にも、共感と尊敬を覚える。
彼の堂々とした言動に反感を覚える輩もいる。
彼のSNSには、誹謗中傷が集中したこともある。
それらに対して、無視はするが、彼は逃げていない。
そんな目にあったとき、「アカウントを消せばいい」とか「SNSを見なければいい」という人たちがいたが、それは、「いじめられたくないなら、違う学校へ行けばいい」と言うのと同じだと彼は言う。
そんなやり方はまったく納得できない。いじめている人間が100%悪いのであって、いじめられている人間に一分も非はない。私はこれからも、ネット上の誹謗中傷に立ち向かっていく。木村花選手のような悲しい事件は、二度と引き起こしてはならないのだ。


そんなたくましい彼だが、五輪後、あっさりと引退を決めた。
それは「ビジュアルスノー」という目の難病になったからであることも明らかにし、それに対しても逃げずに、同じ病で悩む人に一緒に戦おう、と打ち返す姿勢をしっかり示している。

力強い彼の文章、言葉の数々には、「打ち返す力」という書名がぴったりと合っている。
勇気と元気が湧いてくる本であった。
 

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