『お釈迦さまは、遠い土地からはるばる旅をして師を拝しにきたお弟子さんや信者の人たちを迎えると、「道中、難儀はなかったろうか。食べ物に困りはしなかったろうか。仲間はみな変わりはないかね」と、必ずお尋ねになりました。
あるとき到着したお弟子の一団に、お釈迦さまがいつものように「みんな元気だっただろうか」と尋ねられると、一行の中の一人が、「じつは仲間の一人が病に臥せってしまったのですが、世尊を拝したい一心で残してまいりました」とお答えしました。
するとお釈迦さまは、「私に会いにきてくれるよりも、残って病気の友を看病してくれる人こそ、千里離れていようと私と対面しているのだよ」とお諭しになられたのでした。
私の姿かたちを見にくるよりも、私の願いをしっかり自分のものにする者こそが、私の本当の弟子なのだ、とお釈迦さまは教えられたわけです。
私たちが仏さまを拝するのは、そのみ心に近づきたいと願うことです。一人でも病み苦しむ人がいたら、看取り、助けずにいられないのが、仏さまのみ心です。私たちも、なによりもまず苦しみ悩む人を救うことを先にしなければなりません。』
庭野日敬著『開祖随感』より