『人間を練るのにいちばんいいのは、自分に反発する人、こっちの言うことを聞かない人にぶつかったときです。そういう人に出会うと、「人というものは一筋縄ではいかないものだ」と思い知らずにいられません。
なんでも「はい」「はい」と言うことを聞いてくれる人と違って、いちいち突っかかってきたり、こっちのアラばかり探しだそうとしているような人に真正面から取り組んで、「なんとかしてこの人に分かってもらいたい」と真剣になると、その突っぱっている態度の裏に隠された、その人の寂しさや弱さが、だんだん見えてくるようになるのです。その相手の心が見えると、もう他人事ではなくなるのですね。
実際に、さまざまな人とぶつかり、取り組んでみて、「なるほど、人の心というものはこういうものだったのだ」とつかめると、腰がすわってきます。どんな人に対しても、たじろぐことがなくなります。それが、懐の深さになるのです。
人間の本当の心の中が分からなくては、本当の思いやりは生まれません。それでは、人がついてきてくれないのです。』
庭野日敬著『開祖随感』より