豊臣秀吉は主君・信長の長所を見て、「うちの殿は偉い人だ」と心から思い、いつもそれを口にする。それに対して明智光秀は、信長の欠点を黙って見ていられず「天下人になられたら徳を具えていただきたい」と進言し、主人の欠点を直そうとして不興を買い道を誤ってしまった、という説を聞いたことがあります。これはさまざまな人間関係にあてはまるように思います。
たとえば夫婦円満の秘訣も、そのへんにあるのではないでしょうか。いったん結婚した夫婦は、そう簡単に別れるわけにはいきません。とはいっても、夫婦として三百六十五日、朝から晩まで鼻を突き合わせている者同士、互いにアラを数えだしたら、きりがなくなってしまいます。そこを直してほしい、ここを変えてもらいたいといっても、夫婦の間柄では、なかなか素直に聞けないのですね。
夫婦の相性とは、ただ気心が合うというだけでなく、互いにパートナーとして、より力を発揮できるようになることが大切です。そのへんの機微が、このあたりにある気がするのです。欠点を直そうとするよりも、互いによいところをほめ合う習慣をつけたほうが得策だと思うのです。
庭野日敬著『開祖随感』より