『病気の苦しみによるうめきも、その半分は「私の苦しさを分かってほしい」という訴えだといいます。ですから、そばについていて手をにぎってあげるだけで、痛みが半減するのです。
経験の豊富なお医者さんは、その患者さんのつらさや心配を自分が受け止めてあげて、「そうだね。ここが痛いんだね。つらいんだね」と患者さんの訴えを、もう一度繰り返して口にして痛みを共にするのだといいます。
大聖堂のご本仏さまは「与願施無畏(よがんせむ)」の印を結ばれています。右の手のひらを開いて「なにも心配することはないのだよ」と前にかざされ、左手を「この手にすがりなさい」と私たちに差し伸べてくださっています。病気にかぎらず心配事を抱えているときに、心から信頼している人に「心配しなくていいんだよ」と言ってもらえると、力がわいてきます。
観世音菩薩は、助けを求める人の声を聞くと、その人その人にふさわしい姿で身を現わされて、隣に寄り添い、「つらいね。でも大丈夫なんだよ」とおっしゃってくださいます。相手の心に寄り添うことさえできれば、なにも言わなくても、こちらの思いは伝わるのです。』
庭野日敬著『開祖随感』より