『この人生でなによりも大事なのは、自分自身を知ることです。その本当の自分に気づかせてくれるのが、宗教なのです。
小学校から大学まで、あり余るほどの知識を詰め込んできていながら、そのいちばん肝心かなめのところを教わらず、そこを突き詰めて考えようとしない人が、多くなっているように思えます。それをつかまないと、物や金だけを頼りにして、それに振り回される生き方に流れがちなのです。
人は自分一人だけの力で生きているのではなく、生かされている自分であることを知ってこそ、どう生きるのが本当の生き方なのかが分かってきます。周囲の社会と切っても切れない関係でつながり、まわりによって生かされている自分の責任を、どう果たしていくか。その大もとが定まらないと社会でのさまざまな関係が整っていかないのです。
日蓮聖人は『報恩抄』で、父母の恩、師の恩、国の恩に報いる大切さを教えられていますが、自分がこの世にあるその恩を知ることで、自分の生き方が定まってきます。現代の社会のさまざまな問題の根は、一人ひとりが尊い命をいただいているその大恩を教えなくなったところにあるように思うのです。』
庭野日敬著『開祖随感』より