金沢文庫の特別展「国宝 金沢文庫展」を見る。
昨年夏、金沢文庫が管理する称名寺伝来の古文書類約二万点が、国宝に指定されたことを記念した展示会。
さりながら、目的は金沢北条氏四代の肖像画を見ることにあり。
実時によって確立した金沢北条氏は、二代顕時の子、三代貞顕が執権となって全盛期を迎へるが、ほどなく子息の四代貞将もろとも、鎌倉幕府滅亡と運命を共にする─
幕府が風前の灯火のなか、幕府の能吏として絶頂を極めた一族の運命の皮肉さを、思わずにはいられない。
金沢貞顕は高時のあとを受けて執権となったものの、元来が穏健な性格であったために混迷する情勢を御しきれず、わずか十日で辞任してしまふ。
“政権が安定してる時にこそ手腕が発揮できるタイプ”
とは、後世の歴史家の評価だ。
また、わたしが学生時代に好んで見てゐたNHK大河ドラマ「太平記」では、金沢貞顕役を故•児玉清さんがイメージ通りに好演されてゐたことを思ひ出す。
金沢文庫をあとにし、隧道を抜けて、池辺の菖蒲が見頃を迎へてゐる称名寺のお庭に立ち寄る。
風にそよぐ若葉の音。
お庭を訪れた人々の会話。
子どもたちの嬌声──
時代の荒波をいくつも乗り越えた末の達観した静けさが、それらをゆったりと包み込む。
この風情こそが、
金沢北条氏が後世にのこした、
いちばんの、
“宝”ではないだらうか。
昨年夏、金沢文庫が管理する称名寺伝来の古文書類約二万点が、国宝に指定されたことを記念した展示会。
さりながら、目的は金沢北条氏四代の肖像画を見ることにあり。
実時によって確立した金沢北条氏は、二代顕時の子、三代貞顕が執権となって全盛期を迎へるが、ほどなく子息の四代貞将もろとも、鎌倉幕府滅亡と運命を共にする─
幕府が風前の灯火のなか、幕府の能吏として絶頂を極めた一族の運命の皮肉さを、思わずにはいられない。
金沢貞顕は高時のあとを受けて執権となったものの、元来が穏健な性格であったために混迷する情勢を御しきれず、わずか十日で辞任してしまふ。
“政権が安定してる時にこそ手腕が発揮できるタイプ”
とは、後世の歴史家の評価だ。
また、わたしが学生時代に好んで見てゐたNHK大河ドラマ「太平記」では、金沢貞顕役を故•児玉清さんがイメージ通りに好演されてゐたことを思ひ出す。
金沢文庫をあとにし、隧道を抜けて、池辺の菖蒲が見頃を迎へてゐる称名寺のお庭に立ち寄る。
風にそよぐ若葉の音。
お庭を訪れた人々の会話。
子どもたちの嬌声──
時代の荒波をいくつも乗り越えた末の達観した静けさが、それらをゆったりと包み込む。
この風情こそが、
金沢北条氏が後世にのこした、
いちばんの、
“宝”ではないだらうか。