能樂師大皷方の故人亀井忠雄氏の藝を偲んだラジオ放送を聴く。
私も故人が舞薹で大皷を打奏してゐる姿は見たことはあるが、一囃子方がそこでシゴトしてゐる、くらゐの印象しかない。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/43/17/2894315943ca82ff62d2e20d3d89f616.jpg?1692882869)
むしろ、氏の同業者に對するエラそうな言動の多いことを仄聞し、さういふヒトなんだなと云ふことで、強い印象がある。
因みに、かつて二代目市川猿翁の孫を「駄馬」と公言した思ひ上がりも甚だしい歌舞伎囃子方(チリカラ屋)の親玉は、故人の次男にあたる。
放送では故人と半世紀近く親交があったと云ふ“能樂プロデューサー”なる者が、このテのヒトにありがちな禮賛型の解説を延々と語るなかで、故人の舞薹上での“気魄”について述べてゐたが、「道成寺」出演時の實際の録音を聞いてみると、ほとんど奇聲な掛け聲を喚いてシテ方(主役)の邪魔をしてゐるやうにしか聞こえず、「主役はアンタぢゃない!」とツッコミたくなるものがある。
氏は生前に「大皷は命懸けだ」と語った云々、どの道でもそれで食ってゐればメシの種ゆゑ誰でも命を懸けるのは當然であり、そんなことはドサ回りの役者崩れでさへも宣ふ。
氏の没落、今回の解説者氏は「これで本當の意味での頭取(音頭取)がゐなくなってしまった」と人と嘆き合った云々、なァに、少しすれば必ず誰か穴埋めは現れるもの、ただ今までは上がつかへてゐたので、出るに出られなかっただけサ。