ラジオ放送で、金剛流の「采女」を聴く。
采女(うねめ)とは今は昔、ミカドの身辺世話係の女官として朝廷に差し出された地方豪族の娘たちのことで、ほかにも宮中の宴席では場の雰囲氣を壊さないやう、何かと目端を利かせる役目も負ってゐた云々。
この曲では、ミカドの寵愛が他へ移ったことを苦に猿澤池へ身を投げた一人の采女の靈が、南都を訪れた旅僧に救ひを求める悲話として扱はれる。

カノジョの哀れな最期を知ったミカドが現場へ赴いて詠んだ歌が、また傑作である。
『吾妹子(わぎもご)が 寝ぐたれ髪を猿澤の 池の王藻と見るぞ悲しき』
──あなたの寝乱れ髪が、池の藻屑になってしまった。
なかなか刺激的な歌である。
現代ではTV中繼される宮中歌会始で、ぜひ堂々と披講してほしい歌である。
それはさておき、私にはほかのオンナにオトコを盗られて涙ぐむ女々しいオンナより、腹を立てて相手に討ち入るわわしいオンナのはうが、理解しやすい。