国立能楽堂で、金春流の「阿漕」を観る。
禁漁区での密漁が発覚して沖に沈められた漁師が、亡霊となって旅僧の前に現れて、救いを求める物語。
業の強さは心の弱さと表裏一体なのだということを、八人の地謡方が凄まじいまでの迫力で、観る者たちへ訴えかけてくる。
人間は、この世にいても、あの世にいても、常に救いを求めている。
そのような願いが、すでに我欲なのではないか―その声が謡いから聞こえた時、わたしは亡霊が揚幕の内へ消えたのちも、しばらくはそこから動くことが出来なかった。
禁漁区での密漁が発覚して沖に沈められた漁師が、亡霊となって旅僧の前に現れて、救いを求める物語。
業の強さは心の弱さと表裏一体なのだということを、八人の地謡方が凄まじいまでの迫力で、観る者たちへ訴えかけてくる。
人間は、この世にいても、あの世にいても、常に救いを求めている。
そのような願いが、すでに我欲なのではないか―その声が謡いから聞こえた時、わたしは亡霊が揚幕の内へ消えたのちも、しばらくはそこから動くことが出来なかった。