迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

江戸の中心で濃厚上方色。

2018-03-25 18:26:53 | 浮世見聞記
お江戸日本橋亭で、笑福亭鶴光の落語を聴く。

三人の弟子がそれぞれ一席づつ口演したあと、まずは「秘伝書(地上げ)」。

東京の落語では「夜店風景」といふ題で、先代鈴々舎馬風の古ゐ音源で聴ひていらゐ好きになった噺。

と言ふか、この噺を聴ひて先代馬風のファンになったのだが、意表を衝ひたナンセンスな面白さは東西共通。

音源に遺る先代馬風版は、途中の一番盛り上がったところで上手く切ってゐるが、「地上げ」といふ題で吹き込んだ初代桂春團治のレコードで聴くサゲは、潮が満ちてくる前に地上げしろ、と云ふもの。

鶴光師もそのやり方で一度サゲてから、「これではわかりにくゐので」と、新幹線の列車名に掛けた独自のサゲで締めた。

さういふ工夫があっても、いゐと思ふ。


トリは「高津の富」で、一文無しの男に百両が当たるといふ結末よりも、籤引きを目前に集まった男たちが、好き勝手に“夢”を語るところが聴かせどころであり、またそこをだう工夫するかで、その噺家の腕が見ゑてくる噺だと思ふ。

今回のやうにそこがやや長ゐと、聴ひてゐるはうは退屈しはじめる。

落語に限らず、生(ナマ)の舞台は演者とお客の気持ちが合致しなければ、“生”なだけにいゐものは生まれなゐ。

その厳しさを、「鉄砲勇助」を口演した笑福亭和光の高座に見る。

さりながら、

『藝人に 上手ひも下手もなかりけり 行く先々の水に合はねば』

ではある……。


開口一番に登場した笑福亭茶光の「平林」もなかなかだったが、その次に出た笑福亭竹三の「軽業講釈」が、いかにも上方噺らしく“はめもの”が賑やかで、今日の会では一番楽しかった。
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