東京都目黒區下目黒に来たついでに、明治四十年(1907年)から昭和八年(1933年)まで當地に存在してゐた「目黒競馬場」の痕跡(あと)を訪ねばやと、存じ候。
目黒通りにある「元競馬場」信号付近が、かつての競馬場正門付近。
歩道上の少し離れた位置には、當時の名馬“ソルトゥヌル號”の像を頂いた競馬場跡の記念碑、
ここから下目黒四・五丁目へと折れて、かつての競馬場内──現在ではほぼ縦橫の道に区画されて、往年の面影は無い住宅地を歩いてゐると、さうした町並みを無視するかのやうに、大きく弧を描いて伸びる細道に出會す。
これがかつて競争馬が走った周回路の一部で、そのまま道として殘ったもの。
(※-が周回路跡、・が冩真の撮影地點)
──古道探訪家としての私の興味は、ここまで。
洋式競馬と云ふ近代娯樂の地は、住宅街と云ふ現代文明のありふれた景色となって浮世に同化してゐることを知ったところで、やうやく晴れ間が覗いたあちらの方角へ向わばやと、存じ候。