迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

浮世それぞれのときめき。

2018-04-28 08:46:47 | 浮世見聞記
朝のラジオ番組のなかで、パーソナリティーがゲストのジャーナリストに、

「あなたが時めくものはなんですか?」

と質問してゐた。

中東諸国の最前線に赴ひて取材活動をしてゐるそのジャーナリストは、

「トンカツです」

と答へた。

「そんなもの、いつでも食べられるぢゃなゐですか」

と笑ひ出すパーソナリティーにジャーナリストは、

「中東はイスラム圏のため、豚肉を口にできません。だから、日本に帰って来てトンカツを見ると、時めくんです」

と、特有の丁寧な口調で説明した。

私は「ああ……」と納得し、パーソナリティーは小さく唸った。

いつでも食べたゐ時に何でも食べられる環境の人と、さうでなゐ環境にいる人との意識の差が、明確に表れた瞬間だった。


『そんなもの、いつでも食べられるぢゃなゐですか』


ラジオ番組なので事前に打ち合わせをし、多少の演出もあるのだらうが、浮世の有様を伝へなければならなゐシゴトの者が、実は浮世の真実が見へていなゐ、といふ気がした。
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