迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

石積物語。

2019-02-25 17:25:10 | 浮世見聞記
横浜みなと博物館の企画展「横浜船渠 ドック物語」を見る。


船渠(ドック)とは船の修繕施設──“病院”のことで、横濱には明治の後半から末期にかけて、三基のドックが“難産”の末に誕生した。



以来、昭和五十七年に役目を終へるまで、みなとヨコハマの重工業を牽引し続けたわけだが、それを下支へした労働者達のなかには、作家となる以前の吉川英治や長谷川伸もいた──

いづれも親が人生に失敗したがための犠牲者で、華やかに重工業化した近代ニッポンの裏側にはどんな人生ドラマがあったのか、その“現実”を、興味深く見る。



先日も、定職の月給だけではとてもやっていけないので副業(アルバイト)を考へてゐる、と話す若い社会人がいて、この國の経済がいかに嘘だらけかを、目の当たりにしたばかりだ。



その後、二基のドックは國の重要文化財に指定され、



現在では石造建築物の趣きを、深く醸し出してゐる。


しかし、その石積みは人の手によって成されたことを、私たちは知るべきである。



高くはない賃金で、

何かしらの事情を抱へて、

しかしそのためにさうせざるを得なかった人々が、

そこには多く携わってゐたであらうことを……。





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