迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

待たない待ち合はせ。

2019-02-28 23:22:08 | 浮世見聞記
驛まで来て、私は足をとめた。


私が逢ひたいのは、だうやらあの人ではないらしい──


このまま押して出かけても、くたびれ損になるやもしれぬ。


過去にも憶へがある。

それが、私の足を引き留める。


やめやう。


結局、私はもと来た道を引き返す。



私は、あの人に逢ひたいのではないのかもしれない。


部屋に戻り、

CDを再生する。


いつの時代も変わらぬ聲が、そこから聴こえる。


私は、この人を偲びたかっただけなのだ──


私はさう納得させる。





心の奥の微かな後悔を、

己れに悟らせまいため……。
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