公共文化施設に入るときの決まりとして、入口で検温を受ける。
係員は私の額に検温器をかざすと、「んっ……!?」と言はんばかりの表情(かお)をした。
そして、まういちど検温します、と緊張の面持ちで告げた。
私はドキリとした。
まさか、
まさか、
そんな……。
係員はまういちど検温器を私の額にかざすと、戸惑った表情のまま画面の数値を私に見せた。
“35.8℃”
一度目は、もっと低い数値が出たのだと云ふ。
それで、「んっ……!?」となったのか。
しかし、私の平熱は36.0℃台のはずなのだが……。
ああ。
浮世に拗ねてばかりゐるゆゑ、
低血動物になったといふことか。