早朝にラジオで、観世流の謠曲「源氏供養」を樂しむ。
地謠の、腹の底から響く調子がいかにも観世流で、「これだぁ……」と身心に朝一番の滋養。
「源氏供養」だけは、観世流が一番好きだ。
この曲の、優美な調子(ヨワ吟)と強い調子(和吟)が綯ひ交ぜになったクセの節付けは観世流だけのもので、音樂として常に耳惹かるる。
この気持ちを、自分なりになんとか形に出来ないかと我が現代手猿樂の一曲に創ったのが、人災疫病下の地元密着派生活における私なりの活動。
動画配信を予定してゐた今年の鎌倉薪能がお粗末な事情で“延期”になった如く、
劇団四季がまたしても役者に感染者を出す大失態を演じた如く、
現在はまだまだ人前に立って作品を演じられるやうな状況ではない。
しかし、それがいつまでも續くわけではない、……だらう。
紫式部が源氏物語の想を得たと云ふ八月十五夜の月の如く、
澄んだ気持ちで作品を演じられる時が訪れるまで、
私は人災疫病といくらでも根競べをしてやるのである。