トウキョウ都内ばかり行ってゐるので、今日は橫濱(ハマ)へ行く。
トウキョウ都心に比べて、いくらか氣温は和らいでゐるが、湿度で汗ばみ、氣分が上がらないことに変はりはない。
なるべく早く用事を済ませて棲家へ帰らうと思ってゐると、象の鼻パークの一隅に、かつて橫濱の港湾と經済を支へてゐた勞働者たちの供養塔があることに氣付く。
建立主は“ハマのドン”こと、藤木幸夫氏。
港湾勞働者たちが博打で身を持ち崩す過酷な境遇を肌身で知ってゐるからこそ、かつて山下埠頭に外夷を胴元とする公營賭場を開設せんとする官の計画に橫濱市民と組んで真っ向から反對し、計画撤回を成し遂げた人物として記憶も新しい。
浮世にはまだ“正義”が殘ってゐたことを知らしめた出来事であり、そしてあの時は橫濱史上最大の危機でもあった。
もし氷川丸の向かふに賭博が開かれる街になってゐたら、私は橫濱を日本で嫌いな場所の三つ目に數へなければならぬところであった。