「上野焼」とかいて「あがの焼」と読みます。でも、静岡あたりでは、あまり知られていない焼きもですよね。それもそのはず、上野は、北九州の筑豊炭田地帯に隣接する直方市の隣の赤池町という町にある、静岡から考えたらとてつもなく遠い焼きものの町です。その「上野」にいってきました。といっても、別件があってのついでにです。
北九州市博多から小倉へ、小倉から筑豊本線で直方へ、さらにそこから平成筑豊鉄道で赤池へ、さらにタそこからクシーで15分、静岡からだと丸一日かかりそうな田舎町。
そこの小高い山道をくねくねと登っていくと、点々と20軒ほどの窯元があります。どこの窯元にも、ショウルームのようなものがあって、そこに立ち寄って自由に作品を見ることができます。作風は、作家によってかなり違いがありますが、総称して「上野焼」というわけです。窯場めぐりは、そんな窯元を一軒一軒のぞきながら、いろいろなお話を伺うわけです。
知らない町をひとりで歩いていると、本当に「遠くまできたものだ」と実感します。ここでは私は異邦人、一抹の不安と開放感を感じながら、それでも一服のお茶をいただき、焼きものの話をしていると、親しみの中から懐かしさのような感情がわきあがってきて、ついつい話し込む、それが、ひとり旅の面白いところでしょうか。
いうまでもなく、九州は日本の焼き物の発祥の地。秀吉が朝鮮出兵の際、朝鮮から陶工を連れてきたのが、九州の焼きものの始まりだといわれています。有田や唐津は特に有名ですが、上野焼も同じ歴史を持っています。昔は、細川家や小笠原家の直領で、伝統的な茶陶が主流だったそうで、今でも繊細な茶道具を作っている作家もいます。が、大方はごく普通の、何でもありの焼きものを作っています。作品などについては、また書きます。
写真は、右から窯元の入り口、陶芸窯の煙突、皿山への上り口