テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

~ てのひらに、レモン ~

2021-06-18 23:46:55 | ブックス
「こんにちわッ、テディちゃでス!
 ふうゥ! ねむけもォ、ふきとびィまス!」
「がるる!ぐるがるーる!」(←訳:虎です!柑橘パワーだ!)

 こんにちは、ネーさです。
 初夏の眠気もダルさも一瞬でクリアにしてくれるのは、
 柑橘系の果物のさわやかな香り、ですね♪
 そこで本日の読書タイムも、
 果実を”主役“とするあの名作を、どうぞ~!

  



        ―― 檸檬 ――



 著者は梶井基次郎(かじい・もとじろう)さん、
 絵は げみ さん、
 2017年7月に発行されました。

 文豪さんの古典的名作が
 現代の人気イラストレーターさんによって
 新たな生命を得る
 《乙女の本棚》シリーズ、
 先日は芥川龍之介さん著『蜜柑』を
 ご紹介いたしましたが、
 今回は――

「みかんにィつづいてェ、れもんッ!」
「ぐるがるるる~!」(←訳:柑橘つながり~!)

 『蜜柑』、
 そして『檸檬』も、
 絵を担当したのは、げみ さん。

 しかし、表紙をはじめ、
 本文すべてのページが
 蜜柑色に満ちていた『蜜柑』とは違い、
 こちらの『檸檬』は、
 所々にレモンイエローを用いつつも、
 画面中で光り輝いているのは……

 ビタミンカラー、
 と言ったらいいのかしら。

「おれんじにィ、りんごォ!」
「がるるぐるーる!」(←訳:メロングリーン!)

 新鮮な果実や野菜の
 明々とした色合いは、
 著者・梶井さんの願いを具現化したものでしょうか。

 物語の語り手である《私》は、
 ”得体の知れない不吉な塊”に
 心を抑えつけられ、
 どんよりと重苦しい毎日を過ごしています。

 音楽も、
 詩歌も、
 もはや慰めにはならず。

 街から街へ
 さまよい歩く《私》が、
 八百屋さんの店先で
 ふと見つけたものは……。

「れもんッ!」
「ぐるるる!」(←訳:つめたい!)

 よく冷えた、レモン1個。

 総ての善いもの、
 総ての美しいもの。

 これさえ、あれば。

 以前は足繁く通っていたのに、
 最近はすっかり遠のいていた
 『丸善』へも行けるかもしれない……?

「れもんのォ、まほうゥ~♪」
「がるるるる!」(←訳:消えないで!)

 短編作品『檸檬』が発表された翌年――
 1931年3月、
 梶井さんは31歳の若さで
 旅立ちました。
 
 作品の重要な舞台となる
 丸善京都本店には、
 レモンを盛った籠と、
 書籍の『檸檬』が
 並んで置かれていると聞きます。

 梶井さんが手に取ったレモン、
 げみ さんが幻視する『檸檬』、
 ふたつでひとつの絵物語を、
 皆さま、ぜひ♪


  
コメント
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