Kinema DENBEY since January 1. 2007

☆=☆☆☆☆☆
◎=☆☆☆☆
◇=☆☆☆
△=☆☆
▽=☆

花嫁と角砂糖

2015年08月08日 18時48分39秒 | 洋画2011年

 ☆花嫁と角砂糖(2011年 イラン 114分)

 原題 Yek Habbeh Qand

 英題 A Cube of Sugar

 製作・監督・脚本 レザ・ミルキャリミ

 

 ☆小津へのオマージュ?

 もしも小津安二郎が現代のイランに出かけて撮ったらこんな感じの映画になるのかもしれない。そんな印象を受けた。いやまじな話、レザ・ミルキャリミは日本へ来たとき小津と黒澤の墓に詣でたそうだし、たぶん、小津の墓に掌を合わせて「観てくださいね」とでも伝えたのかもしれない。それほど、しみじみとした小津調の作品だった。

 ただ、これはおじいちゃんの映画なんだよね。小津だったら笠智衆の役どころだろう。でも僕としては佐分利信か三船敏郎にやってもらいたいけど。ま、それはともかく、おじいちゃんとしては目に入れても痛くないほど可愛がっている孫を、いくらお金持ちだとはいえ、その結婚によって一族が豊かになるかもしれないとはいえ、結婚式が近づいても挨拶にすら来ないような男のところへ、しかもどこかもわからないような海外へ嫁がせたくないわけですよ。けど、おじいちゃんはとっても好い人だから、わしゃ反対だがや、とかはいわない。あくまでも好々爺に徹してる。で、黙って、披露宴のときに使う砂糖を切り出して角砂糖を切り出してる。

 家の中は、まあうるさいことうるさいこと。花嫁のナガール・ジャワヘリアンはとても素朴で優しげな美人なんだけど、彼女の結婚の支度を臍に祭りのような騒ぎだ。たぶんこれがこの家の日常なんだろね。いろんな人が出たり入ったりしてる。でも、おじいちゃんは角砂糖を作ってる。ところが、紅茶を呑もうとしたとき、おじいちゃん、この角砂糖が喉にひっかかって、死んじゃうんだよね。それも、淡々と死ぬんだな。

 で、結婚前夜がいきなり葬式にがらりと変わるんだけど、結婚のお祝いには来ないけれど葬式にはやってきたナガール・ジャワヘリアンの昔なじみの男がいる。かれは、おじいちゃんの壊れたラジオを直してやるんけど、このラジオから流れてくるのが恋の歌なんだな、これが。おじいちゃんはナガール・ジャワヘリアンの花嫁姿なんか観たくなかったし、孫娘がほんとうが誰を好きで、かれもまた孫娘を好きだってことを知ってたんだろうね、たぶん。映画はなにも語らずに終わるけど、こののちの話を充分に予感させる。いやあ、しみじみした好い映画だったわ。

コメント