◇ザ・エージェント(1996年 アメリカ 139分)
原題 Jerry Maguire
監督 キャメロン・クロウ
◇タッチダウンという人生の掛詞
いかにもアメリカ人の好みそうなどん底からの這い上がり物なんだけど、いやまあ、トム・クルーズが青臭いこと青臭いこと。けど、その青臭さの故に、理想的なエージェント業を求めて走り回るんだから、爽やかスポーツマネージメント映画としてはよくできてる。アカデミー作品賞を獲っているとは知らなかったし、ちょいと驚きではあるけれど、それもこれもひっくるめて、まあいいかって感じだ。
一般的に、どんな会社でも利益を上げてほしいとおもう。トム・クルーズのいた会社もそうだ。社員はひたすら営業成績を上げてほしいし、スポーツ選手もそういう会社を期待している。けど、それは会社がでかくて、すべてが利益優先で、選手も調子がいいときの話だ。とうが立ってきて、選手としてそもそも2流だったりして、1流の実力はあるけど運が悪かったり人気がなかったりするような、そんな選手のマネージメントなんてしたくないし、会社としてもそんなやつに関わってる社員なんていらなかったりする。
こうした構図はどの社会でもおんなじだ。
でも人間のあらかたは特別な選手じゃなく、たいした取り柄もないし、それどころか才能も実力も人気もない。なのに、人目につく職業にいるだけで、おなじフィールドにいる人気者と比べられ、馬鹿にされ、捨てられていく運命にある。でも、どうしようもない選手でもなにか光るものがあればそれに期待して全身全霊をかけてマネージメントをしたいという信じられないほどピュアな人間がいたらどうなるだろう?っていうのがこの映画だ。
うそっぽい話なんてもういいよと、ちょっとはおもうけど観てしまうのは、そういう夢物語を経験してみたいと僕もちょっぴりおもっているからだ。そういう点をこの映画はついてくる。なるほど、アカデミー賞、とるか~。