Kinema DENBEY since January 1. 2007

☆=☆☆☆☆☆
◎=☆☆☆☆
◇=☆☆☆
△=☆☆
▽=☆

キングダム 見えざる敵

2015年08月16日 02時22分59秒 | 洋画2007年

 ◎キングダム 見えざる敵(2007年 アメリカ 110分)

 原題 The Kingdom

 監督 ピーター・バーグ

 

 ◎やつらを皆殺しにしてやる

 どうやら、この作品で扱われてるサウジアラビアの外国人居住区爆破事件の顛末はモデルになった事件があるようで、1996年6月26日のホバル・タワー爆破事件と2003年5月12日のリヤド居住区爆破事件らしい。まあモデルがあろうがなかろうが想像されるテロリズムの域は出ないものの、撮り方と編集はものすごい。

 ピーター・バーグという人はかなり銃撃戦が好きなようで、根っからのアクション好きなんだね。それにしてもカメラをマルチで徹底的に使いこなし、それを緊迫感をあおるようなカッティングで繋いでみせる腕前はたいしたもんだ。全編が一定のレベルにある臨場感で包まれてて、休む閑がないくらいの仕上がりだ。

 もっとも筋立てはあるようなないような、でもきちんと目配りされたリアリズムが見ていて心地よい。

 ただ、あれだよね、テロによって友達が恋人が殺されればそれがFBIの特別捜査官であっても「やつらを皆殺しにしてやる」というんだろうし、正義の名のもとに復讐されたテロリスト側としてもやっぱりその家族は女子供であっても「仲間がやつらを皆殺しにしてくれる」と聞かされたときには自分のそれに身を捧げるんだっていう決意の眼を見せる。

 復讐の煉瓦積みだよね。

 殺意の連鎖はもう止められないんだよね、とピーター・バーグはいいたいんだろう。

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ツナグ

2015年08月15日 11時46分49秒 | 邦画2012年

 ◇ツナグ(2012年 日本 129分)

 監督・脚本 平川雄一朗

 

 ◇死者と生者をつなぐ使者

 昔から死んだ人と生きている人との橋渡しをしてくれる人はいた。

 イタコなどもそうだけど、そういうのが好きな人達のふしぎなネットワークを使えば、たいがいどの町にもひとりやふたりは死んだ人との交信ができたり、自分でも意識しないで交感できてたりするものだ。

 だから、この映画の場合、目新しさはほとんどないながら、そういう人達の扱い方が上手だったということになるのかもしれない。原作は読んでないから主人公の中を流れるツナグちからのある血についてはなんともいえないけれど、こういうちからをもった血があってもいい。かれらは霊能者かもしれないし、依頼人の心を読んでその心に映像を見せる超能力者かもしれない。でも、そんなことはどうでもよくて、依頼人に満足と感動を与えることができれば、それでいいわけだよね。

 で、こういう映画は、根っからの悪人を出したらダメで、そういう意味ではきっちりとコンパクトに作られてた。

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アース

2015年08月14日 15時02分09秒 | 洋画2007年

 ◇アース(2007年 イギリス、ドイツ 98分)

 原題 Earth

 監督・脚本 アラステア・フォザーギル、マーク・リンフィールド

 

 ◇BBCが5年もかけて撮影したらしい

 なるほど、だからこれだけの映像になってるわけかと納得はするんだけど、ちょっと疑問におもったりするのは、脚本があるというのはどういうことなんだろう?ってことだ。

 たしかにカメラで追っていけば、このクジラやシロクマたちはこれこれこういうふうに生きてきて、これからもそれそれそういうふうに生きていくんだろな~っていう想像はつく。でも、それをわれわれ人間の常識として対象となっている動物たちにはめ込んだところでなにかいいことあるだろうかって話だ。

 そういうところ、ほんと、動物相手のドキュメントは難しいよね。

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噂のモーガン夫妻

2015年08月13日 00時08分32秒 | 洋画2009年

 ◇噂のモーガン夫妻(2009年 アメリカ 103分)

 原題 Did You Hear About the Morgans?

 監督・脚本 マーク・ローレンス

 

 ◇モーガン夫妻は何処だ?

 あるいは、モーガン夫妻を探せ?というのが原題の意味するところなんだろうけど、どうにもこの邦題は内容に合ってなくて気に入らない。

 ま、そんなことはともかく、しょぼいインテリを演じさせたら右に出る者のいないヒュー・グラントだけど、ここでもやっぱりしょぼい。どうしてこの人はこんなにしょぼくれてるのにセレブに見えたり、お人好しに見えたり、運動音痴に見えたり、それでいてなんだかかっこよく見えたりするのはなんでなんだろう?ほんとに貴重な役者さんだとおもうんだけど、コメディタッチの作品ばかりに使われるのが惜しい気もしないではない。

 物語については目新しいものはなにひとつなく、離婚しかけてる夫婦が殺人事件を目撃したために証人保護プログラムによって田舎へ隠れざるをえなくなるんだけど殺人者たちに狙われる内に心が氷解していくっていう、もうどうにもならないくらいがちがちな筋立てだ。にもかかわらず見ちゃうのは、やっぱりヒュー・グラントの魅力としかいいようがない。

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RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ

2015年08月12日 21時37分58秒 | 邦画2011年

 ◇RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ(2011年 日本 123分)

 監督 蔵方政俊

 

 ◇富山地方鉄道

 小さい頃から鉄道は好きだったんだけど、かといって機関車や客車について車種がいえるほどのめり込むことはなかった。

 だから、たとえば、列車の写真を撮るために泊まり込みで出かけていったり、ホームで何時間も待機したり、写真集を集めたり、そういう趣味の人達の集う場に出かけたりすることもなかったし、ましてや人生もなかばにさしかかってから運転手になろうとかおもったことは一度もない。ただまあ、この作品の友和さんのように、自分の人生すべてを鉄道運転手として過ごしてきた人の誇りめいたものはなんとなくわかる。

 ただまあ、なんていうのか、友和さん、好い役者になったね。

 中学のときに百恵ちゃんの映画を観に行ってたこともあって、なんとなく同窓生みたいな感じをこっちだけ勝手におもってるんだけど、富山っていう長閑な世界で淡々としたした物語を観てると、まったくちがう意味で懐かしさみたいなものをしみじみと感じたりするんだよ。

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ボディガード

2015年08月11日 02時39分22秒 | 洋画1992年

 ◇ボディガード(1992年 アメリカ 130分)

 原題 The Bodyguard

 監督 ミック・ジャクソン

 

 ◇I Will Always Love You

 なるほど、スティーヴ・マックイーン、ライアン・オニール、そしてケヴィン・コスナーでようやく成立かとおもえば、納得できるような設定で、これまでどうにも気づかずにいたんだけど、この3人ってなんとなく似てんのね。醸し出してる雰囲気がまるで違うじゃんとかおもったりもするけど、本質的なところが同じなのかもしれない。だから、この主人公は三船敏郎の『用心棒』が好きで62回も観てるわけか~。なんとなく納得するわ。三船さんもこうした系統の役者さんだもんね。なんで邦画の現代物で三船さん主演のこういう作品がなかったんだろ?ないわな~嗤。

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ストリート・オブ・ファイヤー

2015年08月10日 19時20分39秒 | 洋画1981~1990年

 ☆ストリート・オブ・ファイヤー(1984年 アメリカ 93分)

 原題 Streets of Fire

 監督 ウォルター・ヒル

 

 ☆リッチモンドの寓話

 要するに三船敏郎『用心棒』のロックンロール版なんだよね。

 けどそんなことを片鱗も匂わせないのがウォルター・ヒルの凄いところで、まあそもそも『用心棒』だって西部劇からヒントを得てるわけだから、たいがい無法の町にひょっこりと得体の知れない男がやってきて悪い奴をやっつけるっていうのが基本だ。そこに色恋があったり美人のかどわかしがあったりするんだけど最後には民衆の立ち上がりっていうか目覚めみたいなものがあったりもする。そういう物語の定番を音楽映画に仕立ててるところ脱帽しちゃうけどさ。

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華氏451

2015年08月09日 03時48分18秒 | 洋画1961~1970年

 ◇華氏451(1966年 イギリス 112分)

 原題 Fahrenheit 451

 監督 フランソワ・トリュフォー

 

 ◇華氏451度≒摂氏233度

 ほんとに本っていうか紙が燃える温度なんだろうかっておもうんだけど、それより低いと自然発火しないんだろうか?

 まあなんていうか、戦後たった20年しか経ってない時期だから、どうしてもナチスの印象が感じられる。もちろん全体主義への反発なんだけど、それが結局、この時代は戦時中の地下組織をおもわせるような、ヒッピーの集団のような、要するにその時期における反体制集団なわけで、その連中がなんとも稗田阿礼みたいに本を暗記していくんだけど、いやまあなんというのか朗読をテープに録音しとけばいいじゃんとかおもって観てた。

 ていうか、この映画はほんと中学時代によくテレビでやってた。当時の方がすんなり受け入れられた気もするね。ただ、録音しとけよとか撮影しとけよとかはおもわなかった気がするけどね。でも、今だったらどうなんだろうね。本というのは木を伐採しないと作れないわけで、環境問題とかそういう観点からすれば本なんてものは無くなったところで大丈夫とかっておもわないかしら?

 ま、でも、ここでいう本っていうのは人類の叡智のことなんだけどね。

 

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花嫁と角砂糖

2015年08月08日 18時48分39秒 | 洋画2011年

 ☆花嫁と角砂糖(2011年 イラン 114分)

 原題 Yek Habbeh Qand

 英題 A Cube of Sugar

 製作・監督・脚本 レザ・ミルキャリミ

 

 ☆小津へのオマージュ?

 もしも小津安二郎が現代のイランに出かけて撮ったらこんな感じの映画になるのかもしれない。そんな印象を受けた。いやまじな話、レザ・ミルキャリミは日本へ来たとき小津と黒澤の墓に詣でたそうだし、たぶん、小津の墓に掌を合わせて「観てくださいね」とでも伝えたのかもしれない。それほど、しみじみとした小津調の作品だった。

 ただ、これはおじいちゃんの映画なんだよね。小津だったら笠智衆の役どころだろう。でも僕としては佐分利信か三船敏郎にやってもらいたいけど。ま、それはともかく、おじいちゃんとしては目に入れても痛くないほど可愛がっている孫を、いくらお金持ちだとはいえ、その結婚によって一族が豊かになるかもしれないとはいえ、結婚式が近づいても挨拶にすら来ないような男のところへ、しかもどこかもわからないような海外へ嫁がせたくないわけですよ。けど、おじいちゃんはとっても好い人だから、わしゃ反対だがや、とかはいわない。あくまでも好々爺に徹してる。で、黙って、披露宴のときに使う砂糖を切り出して角砂糖を切り出してる。

 家の中は、まあうるさいことうるさいこと。花嫁のナガール・ジャワヘリアンはとても素朴で優しげな美人なんだけど、彼女の結婚の支度を臍に祭りのような騒ぎだ。たぶんこれがこの家の日常なんだろね。いろんな人が出たり入ったりしてる。でも、おじいちゃんは角砂糖を作ってる。ところが、紅茶を呑もうとしたとき、おじいちゃん、この角砂糖が喉にひっかかって、死んじゃうんだよね。それも、淡々と死ぬんだな。

 で、結婚前夜がいきなり葬式にがらりと変わるんだけど、結婚のお祝いには来ないけれど葬式にはやってきたナガール・ジャワヘリアンの昔なじみの男がいる。かれは、おじいちゃんの壊れたラジオを直してやるんけど、このラジオから流れてくるのが恋の歌なんだな、これが。おじいちゃんはナガール・ジャワヘリアンの花嫁姿なんか観たくなかったし、孫娘がほんとうが誰を好きで、かれもまた孫娘を好きだってことを知ってたんだろうね、たぶん。映画はなにも語らずに終わるけど、こののちの話を充分に予感させる。いやあ、しみじみした好い映画だったわ。

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ハノーバー・ストリート 哀愁の街かど

2015年08月07日 00時14分49秒 | 洋画1971~1980年

 ◇ハノーバー・ストリート 哀愁の街かど(1979年 イギリス 109分)

 原題 Hanover Street

 監督・脚本 ピーター・ハイアムズ

 

 ◇1943年、ロンドン

 英空軍中尉ハリソン・フォードと看護婦レスリー・アン・ダウンの不倫なんだけど、まあ、物語としては夫クリストファー・プラマーのドイツ潜入の際のパイロットとして参加し、ふたりで不時着して命からがら機密を盗んで帰ってくるというところが味噌だ。

 とはいえ、まあ後半の活劇部分に重点が置かれてるものだから、不倫のはじまりはなんとも唐突で展開も早い。こんなに楽に不倫ができるもんかね?という疑問は観客は抱くかもしれないが、当人たちはまったく抱かない。それほど、早い。でもこれくらいの展開にしないと第三帝国への潜入という不倫映画とはおもえない展開が待ち受けてるんで、どうしようもない。

 つまりは、物語の中の中尉のように物語そのものも不倫と活劇という二兎を追ってるわけで、これでは味気ないだけでなく妙に忙しないものになっちゃうのは仕方ないことなんだろね。

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卓球温泉

2015年08月06日 00時09分09秒 | 邦画1991~2000年

 ◇卓球温泉(1998年 日本 110分)

 監督・脚本 山川元

 

 ◇ロケ地へ別所温泉

 ちなみに宿の撮影は田沢温泉の「ますや旅館」と白骨温泉の「白船荘 新宅旅館」だったらしい。

 ますや旅館には今も尚、卓球台がある。

 ちなみに、温泉で卓球をしたという記憶は、新入社員の頃、越後湯沢だったか、うちの会社の経営している鄙びた温泉旅館があって、そこに同期の男連中と泊まりに行ったときのものだ。以来、卓球というものを一度もしたことがない。曖昧な記憶なんだけど、スマッシュを打ち合ったような気がして、負けたら嫌だな~という妙なプライドが顔をのぞかせていた。ぼくは友達と勝負事をすることが嫌いで、負ければ嫌な気になるし、かといって買っても後味が悪い。だから、友達と勝負するのは嫌で、このときもなんだかな~とおもってた。

 なのに、当時、温泉には卓球台があったんだよね。だいたい、どこの誰が温泉で卓球なんてするんだよとおもってたし、温泉に来て卓球してわあわあ騒ぐ連中の気がしれなかった。だから、はっきりいった話、温泉宿に卓球台があるのは好きじゃなかった。たぶん、ぼくよりもひと世代上の連中が好きだったんじゃないかと。けどさ、温泉旅館って、卓球台は今もときどきあるのに、ビリヤード台ってなかなかないんだよね。なんでなんだろね?

 ま、そんな温泉の卓球の話なんだけど、この映画を観て、ちょっと目からうろこが落ちた。

 わざとらしい演技や演出、テレビドラマみたいな単調さ、特徴のない画面、なにをとってもあんまり記憶に残らない出だしと中盤とラストなんだけど、まあ、松坂慶子はあいかわらずの松坂慶子で、この人、おばさんになってからずっと人の良いおばさんに徹してるんだよね。それはそれで凄いのかもしれないんだけど、この人の特徴が遺憾なく発揮されたといえなくもない。なんたって、温泉に現実逃避してきた人妻が卓球で町おこしをしたらどうだろうっていう田舎の温泉街に協力して唯一得意なものである卓球の指導と大会の運営までしちゃうっていう話なんだから、ちょっとおまぬけなお人好ししかやらない松坂慶子にはぴったりの役柄だった。いや、話したいのはそんなことじゃない。

 目からうろこだったのは「温泉の卓球っていうのはどれだけ長くラリーを続けられるかってことが大事なの」っていう定義だ。これは、すごい。温泉の卓球でスマッシュとかするのは、空気を読めないあほたれなんだよね。またそういうのをみてぎゃあぎゃあ騒ぐのも温泉場の礼儀を知らない奴ってことなんだよね。なるほど!

 この定義を教えてくれただけでも、この映画は作った意義があるんだよ、たぶん。

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リード・マイ・リップス

2015年08月05日 15時32分04秒 | 洋画2001年

 ◎リード・マイ・リップス(2001年 フランス 119分)

 原題 Sur mes lèvres

 英題 Read My Lips

 監督 ジャック・オーディアール

 

 ◎難聴の女と前科者の男

 それも、女エマニュエル・ドゥヴォスは30代で、男ヴァンサン・カッセルは20代。

 不動産会社でつまらない仕事しか与えられない女が助手に雇った男との間に恋が芽生え、どちらも社会から疎外されているという傷をいたわり合うように関係を深め、しかも、仕事上の不満と正義をぶつけるように女は同僚の仕事をぶんどり横領を暴く半面、マフィアの親玉の金を横領するというせこい悪事もこなす。もちろんそれはふたりからすれば社会に対する復讐ということもあるんだけど、そこで味噌になっているのが、エマニュエル・ドゥヴォスが読唇術ができるってことだ。

 この読唇術が、最初から中盤にかけてはまあまあ恰好な武器になるんだけど、佳境、ヴァンサン・カッセルの悪事が知れて監禁されてからは、ふたりにとってたったひとつの最後の頼みの綱になる。こうした展開は実に見事で、けっこうサスペンスフルだったりもする。小品とはいえ、上手に筋が練られてるし、なんとなく社会の暗部を突いているような感じもあったりする。

 読唇術をあつかった映画はいくつかあるとおもうんだけど、これ、佳作だとおもうな。

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櫻の園2008

2015年08月04日 21時31分04秒 | 邦画2008年

 △櫻の園(2008年 日本 102分)

 監督 中原俊

 

 △奇蹟は二度起きない

 1990年に『櫻の園』が撮られたとき、ぼくはその面白さにびっくりした。

 実をいえばまるで期待していなくて、なかば偶然に観ただけだったのだけれども、上映が終わって席を立つ段になって「いや~すごいおもしろかった」とおもわず声を洩らしたくらいの出来映えだった。中原俊がここまで抒情的な映画を撮り上げるとはおもってもみなかったし、このままこういう方向で映画を撮っていってくれればいいのにとおもったりもした。その中原俊がふたたび『櫻の園』を撮ったという。期待しない方がおかしいだろう。

 ところが、この2008年版だが、ぼくはその出来にびっくりした。

 出来が良かったか悪かったかについて書くのはやめよう。ものをつくる人間にとって悪口を書かれることほど嫌なものはないだろうし、その映画がどうして現在のような仕上がりになってしまったかは、監督がいちばんよくわかっているはずだから。映画は、雑に作ろうとか、冗漫に仕上げようとか、美しさを否定しようとか、そんな気持ちで撮っているはずはないんだけれども、ときに、その女優の起用について監督の意見など歯牙にもかけられないことはままある。というより、そういう場合は、演出よりも出演者の方が先に決まっていたりする。この作品がどんな経緯でどうして制作されたのかは知らないけれど、ともかく、1990年のような奇蹟は起きなかった。それだけのことだ。

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恋は3,000マイルを越えて

2015年08月03日 03時10分20秒 | 洋画2009年

 ◇恋は3,000マイルを越えて(2009年 フランス、カナダ 80分)

 原題 JUSQU'A TOI

 英題 SHOE AT YOUR FOOT

 監督 ジェニファー・デヴォルデール

 

 ◇『百年の孤独』

 一冊の小説がカナダとフランスにいる男女の間をとりもつことになるなんて、なんとまあおとぎ話のような。

 けど、実際にはこうはいかない。そもそもなんの興味もない『百年の孤独』をトランクにいれられてしまった恋人もちながらも冴えない男と、偶然そのトランクが届けられてしまった『百年の孤独』を57回も読んだパリジェンヌとが恋愛するためには、なるほど、なかなか会えずに妄想の相手に恋をしちゃった方がいいのかもしれないね。でもそういう恋はたいがいの場合、破綻するものなんだけど、そうじゃなくしちゃうのがこういうおとぎ話なんだろうね。

 ぼくとしては、メラニー・ロランが出てることだけで充分に満足なんだけどね。

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汽車はふたたび故郷へ

2015年08月02日 02時15分53秒 | 洋画2010年

 ◇汽車はふたたび故郷へ(2010年 フランス、グルジア、ロシア 126分)

 原題 Chantrapas

 監督・脚本 オタール・イオセリアーニ

 

 ◇突然の人魚

 おそらくぼくには芸術的な感性がないのだろう、だからこの映画のおもしろさがよくわからない。

 ていうか、ソ連に支配されていた時代のグルジアの閉塞的な状況が嫌でフランスに自由を求めたものの、そこでも商業的な枷をはめられ、結局、至高の芸術を映像化するにはこの人間界では不可能なのだという結論に達する監督の話とおもえばいいんだろうか?それで、人魚の目撃譚と人魚と共に海へ消えてしまったのではないかとおもわせるラストの説明はつくのだろうか?

 子供時代の汽車にただ乗りしていく3人はとっても可愛くて、絵も素敵だった。教会のイコンを盗み出していくところも微笑ましく撮られていて、しかもリアルな動きだったりして、よかった。けど、森へ去っていく子供時代の3人から成長して自主製作映画を撮ってる連中にオーバーラップして現れてくると、とたんに淡泊すぎて単調な世界になっちゃう。

 ぼくにはこの映画のおもしろさがよくわからない。それはたぶん、主人公ダト・タリエラシュヴィリの撮った映画がまるでわからないプロデューサーや観客たちと同じ次元なのにちがいない。まったく情けないことだ。

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