Creator's Blog,record of the Designer's thinking

フィールドワークの映像、ドローイングとマーケティング手法を用いた小説、エッセイで、撮り、描き、書いてます。

ZEISSの空気110. 小説:小樽の翆137. 玲香さんの出産

2020年07月21日 | Sensual novel

 

ゴトッ!、と音がした。

玲香「しまった!、スマホをベッドの下におとした。ベッドの下は物で一杯だから手を伸ばしてもみつからない。最悪!、隙間に落ちた。ウウッ!!、お腹いたたたっ!!!、動けない」

 ツカモッチャン先生の長女の玲香さんは、出産が近いので実家に里帰りしていた。子供達は、みんな学校だ。ママも買い物にでかけている。

玲香「助産院へ電話!、アカン、電話番号はスマホのなかだ。誰もいないのか・・・」

またゴトッ!と音がした。

階下から聞こえてくる。誰か帰ってきた。

玲香「誰かぁー!・・・・いる!!!、痛ったたた・・・・」

小さな足音が階段を上がってくる。

小春「お姉ちゃん・・よんだぁー!!、あらなんか苦しそうだよ!!!、病気!?」

玲香「生まれそう!!、ママ呼んで!!!、そうかスマホ持ってないかぁーー」

小春がバッと走っていって赤ちゃんの本をもってきたまではよかったが、それって生まれた後の話。

小春「書いてないよ」

玲香「それよか、スマホ探して・・・」

小春がベッドの下をかき回したがみつからない。そんな時またゴトッ!と音がした。

・・・

玄関では、グラサンしたマサヒロ君がお寿司を持ってたっている。

マサヒロ「いないのか、じゃ、お寿司をドアにかけて帰ろうかなぁーー」

帰ろうとした矢先、「帰らないでぇー!!!」・・・と悲痛な声が上の方からした。

小春「お姉ちゃん、お腹が痛いって、家、誰もいないの・・・」

マサヒロ「ハアッ!、ああっ、出産が近いんだ、あがるよ」

玲香「助け星ー、ママに電話しぇーー」

マサヒロ「電話番号は?」

玲香「覚・え・て・な・い」

マサヒロ「じゃあ、登録してあるのはツカモッチャン先生だな・・」

そんなわけでツカモッチャン先生からママに電話が飛んで、すぐ帰るよという返事。

マサヒロ「助産院の先生の所に行く?」

玲香「動けない!、お腹が痛い!!」

マサヒロ「じゃあ、僕が呼んでくる・・・」

そういってマサヒロ君は、1kmほど先にある助産院の先生の所までダッシュした。

・・・・

ほどなくしてママが帰ってきた。マサヒロ君が助産院の先生を担いで戻ってきた。遅れてツカモッチャン先生も帰ってきた。

助産師さん「もう鎮痛が始まっているし、動かせないから、ここで産みましょう。それにしてもここは狭すぎるね」

ママ「下のソファがベッドになる」

みんなで玲香さんを担ぎ上げて下のリビングまで下ろした。ここが分娩室がわりだ。

そのうちにツカモッチャン先生の子供達が順次帰ってきた。

ママは非常食のおにぎりをこしらえている。ツカモッチャン先生はマサヒロ君と物置でタライやらを探している。

マサヒロ君と遊んだ長男の一太郎君、次男の小太郎君、次女の美希さん、三女の明菜さん、三男の翼君、それに三女の小春さん、これでツカモッチャンファミリーは、そろった。

・・・

助産師さん「おこたち!、ウロウロしてないで、かわりばんこにお姉ちゃんの腰を押してあげてねぇー・・・」

美希さんと明菜さんが玲香さんの腰を押している、小春が小さな手で団扇をあおいであげてる・・・・。一太郎君と小太郎君と翼君は、ストーブをおこしお湯を沸かし始めた。

助産院さん「長丁場だからゆっくりやりましょう」

ママ「手が空いたものからおにぎり食べてぇー、今夜は長いよーーー」

夕方遅く、翆がお産グッズを抱えてやってきた。

翆「マサヒロから電話があったの。賑やかなお産ねぇー」

ツカモッチャン先生が頭をかきながら「我が家の晴れ事みたいですぅー(笑)」

実際晴れ事だしね。

6人の子供達の12本の手が、かわりばんこに玲香さんの腰をさすったり押している。助産院の先生がおとぎ話をしたり歌を歌ってくれている。

そんななかで玲香さんは、痛い!、痛い!、と叫び続けている。そんな声には飽きたとばかりに、子供達はもみ疲れで寝ているものもある。

・・・・

・・・・

助産師さん「さて、ソロソロかなぁーー、はい!、生まれるよ!!!。じゃあ息んでみますか。ほら!、みんなでお姉ちゃんを支えていてね。ハッ!、ハッ!、フゥーでいってみますか・・・」

12本の手が玲香さんり身体を支えている。

玲香「ハッ、ハッ、ハッ、フゥーー・・・」

助産師さん「その調子で、そのうち赤ちゃんとタイミングがあって来ますよ」

ツカモッチャン「小春がしたってダメよーー(笑)、みんなでやろう・・・」

そのうちに子供達の大合唱になって、ハッ、ハッ、フゥー、が真夜中の家を振るわしている・・・・・。

ハッ、ハッ、フゥー、ハッ、ハッ、フゥー、ハッ、ハッ、フゥー、ハッ、ハッ、フゥー・・・・・・・・

玲香「ハッ、ハッ、フゥー、・・・・うーーーん、こなくそ!!、ぎゃーー!!!、痛い・・・・

助産師さん「おっ、頭が出てきた、その調子・・・・」

ハッ、ハッ、フゥー、ハッ、ハッ、フゥー、ハッ、ハッ、フゥー、ハッ、ハッ、フゥー・・・・・・・・

助産師さん「出た!!!、」

子供達はぎゃー!!、といって後ずさり。助産師さんが赤ちゃんの背中をたたくと・・・・・

ぎゃーーーー、ぎゃーーーー、ぎゃーーーーー・・・・

助産師さん「はい!!!、おめでたです。母子ともに順調だね」

後ずさりした子供達は、おびえるような目つきで眺めている。

そのあとは、へその尾を切ったり、胎盤を戻したり・・・・・ぬるま湯で赤ちゃんの身体をあらったり・・・と助産師さんと翆が手伝っている。

そしてタオルケットにくるまれた赤ちゃんが玲香さんのところにはこばれて、教えるともなく小さな手がお乳を探している。

そんな光景に、子供達はあとずさりして、目だけは赤ちゃんに注目。

小春「エイリアンの子供みたい」

ツカモッチャン先生「それをいっちゃあ、お姉ちゃんが可哀想祖よ(笑)、こっちはエイリアンのお爺ちゃんズラ・・・・

(笑)・・・・

助産師さん「こんなに大勢の家族に見守れながら出産するなんてのは、私も初めてだよ。いい出産だったねぇー」

玲香「あっ、忘れてた!!。パパに連絡するのを !!!!」

パパは仕事でいなくても、玲香さんの下の子供6人、ツカモッチャン先生と奥さん、それに翆にマサヒロ君、総勢10人のファミリー達が支えたお産だった。

・・・・・

小樽の地平線が少し明るくなってきた。

 

小樽市

SONYα6600、E18-135mm/F3.5-5.6OSS

ISO6400,焦点距離18mm,露出補正-0.5,f/4,1/6

 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする