いつもの小樽公園で遠くにみえる海の風景を描いていると、学校帰りの小春がやってきた。
小春「いつもおんなじ絵を描いていて、あきない?」
えっ、海の色は毎日違うよ。
小春「あのねえー、見ちゃったんだ・・・・」
はあ!、何を?
小春「いってもいいかなぁー。オジサン絵を描くお友達だからいっちゃおうかな・・・」
まあ、そこまでいわれなくても。
小春「実は、美希姉ちゃんが、夜の8時になると、いつもいなくなるの。それで12時頃に帰ってきてシャワーを浴びて寝るのね」
どうせデートでしょ。
小春「うん、それでこの間、満月の時に美希姉ちゃんのあとをつけていつたの?。何処へ行くんだろうと思ってさ・・・」
ほう!
小春「山の方へドンドンと歩いて行くじゃない。夜だから小春も道がわからないけど、帰りもお姉ちゃんの後つければいいかと思って、知らない道をゆくと、小さなお寺があるの。そこは誰もいなくて、静かでとても怖いの。そこでお姉ちゃんは、彼氏と待ち合わせして、抱き合ってキスして、小さなお堂の中にはいってゆくの・・・」
小春はどうしたんだい?
「小春一人じゃ怖いなって思って、といってお姉ちゃんに声かけるわけにもいかないし、・・・。そこで入り口の戸の隙間から、姉ちゃん達をのぞいたら、二人とも裸で抱き合っているの。
お姉ちゃんすごいなあ、高2なのに、ちゃんと恋人がいる。しばらくすると、それでお姉ちゃんが教えてくれた座位で抱き合っているのよ。ああいうふうにするんだ。それからお姉ちゃんの身体が激しく動いて・・・。前にお姉ちゃんが教育してくれた通りなの。
お姉ちゃんっていつも強気で不良ぽいところがあるじゃない。だから、お姉ちゃんが男の人を抱きかかえるような感じなの。それで、「もういっちゃったの」なんていってるわけ。そして男の人と笑いながらお話をしているの。小春は退屈だから、月をみてたのね。そしたら、疲れて寝ちゃったみたいなの・・・」
それからどうしたんだい?
小春「眼が覚めたら、お家の布団で寝ているの、もう朝なのよ。あれって!、思ったけど・・・・確か古いお堂の前にいたと思うんだけどなあ・・・」
ホウ、ミステリーだね。
小春「違うの!、ほんとに見たんだから。それで美希姉ちゃんに、夕べお寺にいなかった?、と尋ねたの。そしたら、小春の夢でしょ!、さあ学校へゆこって、いって出てった。ホントに美希姉ちゃんが男の人と抱き合っているところを見たんだから・・・オジサンは、信じるでしょ!!」
ハイ、信じます。
多分こうだと思うよ。小春は、お堂の前で寝てしまった。昼間一生懸命勉強してたから、とても疲れていたので熟睡だった。そこへお姉ちゃん達が帰ろうとすると、寝ている小春をみつけた。だからお姉ちゃんが小春を抱いて家に帰ってきて、着替えさせてくれて、お布団にいれてくれた。
小春「やっばり、そうなんだ!」
美希姉ちゃんは、一寸不良ぽいところがあるけど、心の中では優しいお姉ちゃんなんだよ。
小春「こんな話、お家ではいえないじゃない。だから絵を描くオジサンに話したの。またお家の仕事があるから、今日はここまでね、バイバイ」
・・・
それにしても小樽市内に、そんな廃寺のお堂があるんだ。
昔の農家だったらお寺は誰もいないから、恋人達の逢い引きの場所だったり、後家さん達が若い衆の筆おろしの場所に使ったり、あるいは奥さんや旦那さんの不倫の場だったりして、結構使われていたと史実は伝えている。若い人達は、そんな場所をみつけるのが上手だね。
・・・
翆からスマホに病院職員全員PCR検査を受けたと連絡があった。翆は陰性だった。
残った看護師で院内消毒の日々であるようだ。