遠くにヨットがあてもなく係留されている。
ナンタルのカフェからみると、夏の名残のような気だるい風景を眺めることができる。
カフェは、美希姉ちゃん達がたむろしている。夕方のお茶の時間というわけである。
美希「最近妊娠する女子高生が増えたヨーーん」
「まあ人口減少時代だから、けっこうな事ではないですかぁー、ひょっとして竜宮の遣いでも来たかなぁー」
美希「それがねぇーYOU TUBEでショート版の新婚家庭の動画をいつもやってんだって。それがままごとなのよ。なんだ結婚してまでそんな幼稚な会話をしてるんだ、くだらねぇー。そしたら、子供だけもらっとけばいいかぁー、という女の子が出てきたの」
「それってドラマ仕立てだから現実ではないけど」
美希「そんな会話が出てくるということは、案外幼稚な夫婦の会話があるんじやない」
「火のないところに煙はたたない、ですか」
昔モラトリアム時代という言葉があった。
大人になるのを猶予し、子供のままでいようという意識だった。
今も生きているんだ。
いや、モラトリアムを通過して、幼児化しているではないか。
一体いつ大人になるんだろう。
それでいて、子供だけもらっておくというわけだ。
そんな風に考えてゆくと、世の中は二極化しているのかもしれない。
早く大人になりたいタイプと、いつまでも幼児化を引きずっていたい世代とがいるということか。
つまり結婚という概念を無視するか、あるいは結婚をママゴトの延長と捉えるかの違いかもしれない。
徴税のためにもうけられた結婚&世帯主義というものが、なくなりつつあるのかもしれない。
そんな風に頭の中をぐるぐると、ある要素が駆け巡っている。
美希「アチキー、なんか眼が点になってるよ!」
「おっ、ぼうっとしていた。ビックマックだよね!。直人君もだろ!!」
そういってビッグマックで腹ごしらえをして、カフェを跡にした。
もう夕焼けが眩しいぐらいに見えている。
やはり夏の終わか。