宴の続き
「ベーヤンが今の彼女と知り合ったきっかけは?」
ベーヤン「和恵と知り合ったきっかけは、CFの撮影現場だったよな。埃まみれの黒ずくめの格好で撮影の助手をしていてさ。一番目立たない地味な男みたいな格好で。格好というよりはゴミに近い。すごく痩せていて貧乏を絵に描いた感じだよ」
「そんなのに目がとまったのは、なんで?」
ベーヤン「ふと眼が合って、どこの男だったかなぁーと考えていたら『おはようございます』っていうんだよ。思わず『男じゃなかったの?』と言っちまったよ。それで和恵も笑っていた。『正直な人ねぇー』なんと言われてさ・・・」
榊原「それだけじゃすれ違ってお終いでしょう。切っ掛けがあったの?」
ベーヤン「CFはいろんな会社の人間達が集まって共同制作なの。それで映像会社の社長に、あの男みたいな汚いのは誰って聞いたの。そしたら社長がうちの日雇いカメラマンだけど零細企業だからあまり給料が支払えないのよ。ベーヤン少し面倒見てよ!、だって。社長としては、いい仕事をあげて給料があがるといいなと思ったんだろうね」
「それで・・・」
ベーヤン「じゃあ、原始人みたいなのつれて赤提灯で話でも聞くか。それにもう何日も風呂に入ってないから臭いのよ。もう、ええっ!!、だよ。それでどんな仕事したいのって尋ねた。男みたいな女のできそうな仕事でも探すかと思ってさ」
「それで、仕事を与えたんだ・・・・」
ベーヤン「そうなのよ。それで風の便りでは一生懸命仕事をしているらしい。これで原始人の事は記憶から消えかけていた。この業界ってそんな付き合いが結構あるんだ。それから半年ぐらいたって和恵からメールがきて、『仕事ができるようになりましたから、今度は私が赤提灯でご馳走します』だって。それで以前の赤提灯で待ち合わせたんだよ。だけど店に男みたいな女はいないのよ。そしたらカウンターの奥から声をかけてきた女がいたさ。それがすごく綺麗な女になって別人だったよ。女って磨くとこんなに綺麗になるんだと思って驚いた」
「ベーヤンも原始人みたいなのによく仕事を世話したよね」
ベーヤン「うーーん、なぜだろうね。通り過ぎようと思えば、すれ違う業界なのにさ・・・、不思議だったなあ」
「相性がよかった!?」
榊原「イソップ童話みたいな話ですねぇー」
ベーヤン「だってあのだて眼鏡をして薄汚れた原始人が、突然綺麗になって現れたんだもん。それで酒飲んでいたら、昔からそこにいたような自然な空気があってさ・・・。小さい時の初恋の人に出会った感覚。多分相性がよかったんだろうね。夜にさあ、抱いてもそうなることが当たり前のようにナチュラル。だから今でもフランクに付き合っている。ああいうのを嫁にしたかったよ!!!」
「原始人を無視しなかったベーヤンも偉い!」
ベーヤン「もう上さんのケツどついて追い出したろ!、そう考えたら上さんに家を追い出されたけど、和恵がいるから今は幸せだよ」
「やっぱ相性ってあるんだよ。初めて顔を合わせたのに、昔からの友達みたいな自然な空気というのがさ。だって普通は相手におもねろうとするから、おべんちゃらの連続じゃん。綺麗にみせたいのでうんとお洒落をして化けるわけだよね。それで性欲を恋愛と勘違いして2/3のカップル位はゴールインして仮面夫婦でしょう・・・・。よかったね1/3のカテゴリーで」
・・・
小樽の夜も更けた。