その日は某市内の田舎道を走る仕事だった。某駅20時10分発が最終である。20名が乗車した。駅を出発して走れば走るほど、周囲がどんどん暗闇に包まれてゆく…。だから、途中で乗ってくる人はほとんどいない。ましてや終点近くのバス停で乗ってくるなんてありえな… いた! あと3つで終点というバス停に一人のオッサンが立っていたのだ!! 即、自問自答する。
「たまたまそこに立っているだけだ。黙って通過しよう!」
「いやいや仮にそうだとしても、一応、停まって扉を開けよう」
そして私はバスを停めて扉を開けた。オッサンに動きはない。やはり“たまたま”だったのだ。私は扉を閉めて発車… と思ったら、オッサンが扉の前にやってきた。再び扉を開けると、オッサンは乗ってきた。かなり酔っている様子だったので、私はいつもよりも大きな声で言った。
「あと3つで終点ですけど、よろしいですか? 200円になりますけど、よろしいですか?」
するとオッサンは言った… この私に向かって…
「どこでもいいから連れてってくれぇ~!!」
はぁ…??? オッサンにそんな台詞を言われてもなぁ… 嬉しくも何ともないわい!!! 結局、私は3つ先の終点(目の前にラーメン屋とコンビニがある)でオッサンを降ろして、サッサと車庫へ帰ったのでありました…。