終点で“助手席”の荷物を最後部座席の後ろへ置いて、荷物の“届け先”である某駅へ向かって復路を走り出した。往路においては渋滞というほどではなかったけれど、通常は1回の青信号で通過できる交差点を2回目の青信号で通過する… そんなことが何度もあったので、バスは5分以上遅れていたのである。そして、あるバス停を通過しての直線道路で、後ろを振り返りながら歩道上を走っている男性を発見した。「バスが遅れていたのを【バスが既に行ってしまった】と思って、歩き始めたところへ私のバスが… そんなところだろう」と思ったので、その男性を200mほど追い越したバス停で止まった。そして左のミラーを見ながら走って来る男性を待って… と思ったら、その男性は100mほど後方を歩いていた。「あらら… 私の勘違いだったか…」バスの扉を閉めて走り出しても、男性に変わった動きはなかったので、単なる通行人であることが確定した。そして目の前の信号が赤に変わった…
それから数個先のバス停で一人の男性が乗車した。5分以上の遅れは相変わらずだったので「お待たせしてすいません」と言った。さらにそこから数個先のバス停で一人のお婆さんが乗車したのだが… お婆さんはゆっくりと“助手席”へ向かって歩いて来た。私は扉を閉めてウインカーを出して、いつでも発車できるように準備をした。すると珍しく後続車がすぐに止まってくれた。目の前の交差点の歩行者信号は、青の点滅が始まった。“恩を仇で返す”という言葉が一番嫌いな私としては、止まってくれた後続車も一緒に青信号で交差点を通過して欲しいと思ったので、お婆さんの着席を確認するや否やダッシュ&左へ… すると、左折するには速度が高かったため、助手席のお婆さんの体が大きく右へ傾いて座席から落ちそうになってしまった。驚いた私はすぐにアクセルを緩めて、ハンドルも少し戻しながら左折を継続… 事なきを得た。
その後もいくつかのバス停から乗客があり、「お待たせしてすいません」の連発でした。途中、最初に乗った男性が降りた時には「バス遅れましてご迷惑様でした」と言えたけれど… 終点の某駅ではマイカーが溢れていて、一瞬「どうしよう?」と思ってしまったために「バス遅れまして~」の一言が出てこなかった… “非実力派宣言”通りである。先程のお婆さんは、笑顔で障害者手帳を見せながら運賃箱へ110円を投入した。200円の半額=100円でよいので、私は「100円でいいんですよ」と言いながら10円を返却した。それにしても、なぜ110円だったのだろう…???