グローバルネイチャークラブのガイド日記

グローバルネイチャークラブ(旧グローバルスポーツクラブ)のガイド仲間が観察した伊豆大島の自然の情報を中心にお届けします。

風景が語る物語

2010年03月04日 | 火山・ジオパーク
昨日のツアーは山が霧だったために、元町溶岩流まで足をのばしました。
その時、溶岩流の景色を見ながら、不思議な思いにとらわれました。

黒い溶岩の上に生えているのはススキが1箇所だけ。
後は黒々とした溶岩に、わずかにコケと地衣類が観察できるだけです。

「???」
カルデラ内の1986年に流れ出た溶岩や裏砂漠のスコリア(火山礫)の上にはハチジョウイタドリが
パッチを作っているのに、何故この場所には何も無いのでしょう?
ここでは他の場所よりも大きい10~30cmぐらいの溶岩がガラガラしていますが、
その事と何か関係があるのでしょうか?

すごく不思議に思って、今朝、元町溶岩流の上の方にある元町林道北線の火口周辺を調べに行ってきました。

火口の上の細かいスコリアの上には、ハチジョウイタドリが芽を出しはじめ、オオバヤシャブシが花をつけていました。
春らしい明るい風景です。


溶岩が流れ下った場所を少し登ってみたら、元町溶岩流と同じぐらいの大きさの溶岩でできた一角がありました。
この写真をご覧下さい。

溶岩の上にはコケが付いていますが、まだ他の植物はほとんど成長していません。
噴火後23年の年月が流れているというのに…。

そのすぐ下の場所は土ができていて歩きやすく、様々な植物が生えていました。
土の層はごく薄く、1cm掘っただけで4~5cm大のスコリアが何個も出てきました。

小さな粒の火山礫の上は植物にとって不安定で生きにくいとはいえ、
大きくてガラガラ崩れる溶岩の上より少しはマシな環境のようです。

この場所は溶岩止めの工事が施され、スコリアが下に転がらないようになっているため
より土壌が安定したのでしょう。

元町の溶岩流は目が粗すぎて、イタドリの種は奥深くまで落ちてしまい、
太陽の光が届かなくて発芽できなかったのかもしれませんね。

ちなみに噴火の際、大きな溶岩はあまり遠くに飛べないと言われています。
元町溶岩流のガラガラは、まとまって流れてきた溶岩の上部が風化し崩れたものなのでしょう。
「火の川」の光景が目に浮かぶような気がします。

様々な生き物の命が、風や土壌やその他の自然条件によって影響を受け、違う景色を作っていくのですね。

火山や植物を知れば知るほど、「ここは噴火の時、こんな事が起こっていたのではないか?」とか
「その後、植物達はこんなふうに戦いを繰り広げていたのではないか?」と想像できるようになりました。

一つの風景の奥に長い歴史やドラマがある事に気づくたびに、野外を歩く楽しさが増すような気がします。

(カナ)


コメント
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