「燕子花図と藤花図 -館蔵屏風絵- 」 根津美術館 4/30

根津美術館(港区南青山6-5-1)
「燕子花図と藤花図 -館蔵屏風絵- 」
4/15-5/7



改築工事のため、この企画展を終えた後は何と3年半も休館してしまうという根津美術館へ行ってきました。昨年、修復を経て4年ぶりに公開された光琳の「燕子花図」や、同じく光琳の「夏草図」、さらには鈴木其一の「夏秋山水図」など、大きな屏風画に見応えがある展覧会です。



光琳の「燕子花図」については、前回の特別展の際にも感想を書きましたが、こうして再度出会うと、やはりその構図の妙について唸らされるものを感じます。(前回の感想には、色や形についてばかり書いておりますが…。)一見、無造作に咲き誇っているようでも、実は各所に見られる奥行き感などが、周到に計算されたかのようにして表現されている。余白の妙とでも言うのでしょうか。金箔部分がまさに流水のようにも見え、それぞれの空間が、水の深みや流れる方向などを示しているようにも思えました。一個のデザインとしての燕子花がシャープにまとめられている。そのようにも見えてきます。



さて、今回の展覧会で私が一番惹かれた作品は、円山応挙の「藤花図」でした。まるで滝から落ちる水のような、または仄かな風に靡いている藤の花。それが、驚くほど透明感のある、まさに蔦のように這った枝から垂れ下がっています。枝は、墨をさらっと垂らした上に、水で限りなく延ばしたような表現で描かれていて、あたかも精緻な藤の花や葉を引き立てるかのような存在感です。また藤の花にも要注目です。一つ一つの花びらにたくさんの顔料が配されていることが分かります。同じ花は皆無でしょう。小さな花びら毎に、これほど細かで美しいグラデーションが見られるとは思いませんでした。素晴らしい作品です。



光琳では「燕子花図」よりも「夏草図屏風」の方が私は好みです。こちらは色とりどりの花々が蔦や葉とともに、華麗に、さらにはダイナミックに描かれています。草花の絡み合った、左下から右上へと飛び出すかのような躍動感も、やはりその巧みな構図に由来するものなのでしょうか。右上のタンポポが可愛らしく咲いています。「燕子花図」ではあまり伝わってこないその場の空気が、この作品では強く感じられました。湿り気を纏う夏草のつんとした匂い。それが辺り一面に漂っているかのようです。

しばらくは見納めということで、根津美術館の庭園も久しぶりに散策してきました。お庭の燕子花や藤などともしばしお別れです。ゴールデンウィーク最終日の7日までの開催です。
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