都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「美術館物語 - モネ17歳の作品がやってきた(常設展示)」 埼玉県立近代美術館 5/7
埼玉県立近代美術館(さいたま市浦和区常盤9-30-1)
「美術館物語 - モネ17歳の作品がやってきた(常設展示)」
2006/4/24~2007/1/28
埼玉県立近代美術館の常設展示では今、モネ17歳の時の作品「ルエルの眺め」と、ドラクロワ晩年の「聖ステパノの遺骸を抱え起こす弟子たち」の2点が、寄託展示という形をとって公開されています。ちなみに「ルエルの眺め」は、モネ総目録の冒頭に登場するという記念すべき作品です。先日、ホルスト・ヤンセンの企画展へ行った際に見てきました。
今開催中の常設展(常設展H18年度第1期。7/17まで。)自体は4つのセクションに分かれていますが、このモネとドラクロワの2点は、入口すぐ脇の小部屋にて展示されています。まずはモネが17歳の時に描いた「ルエルの眺め」(1858)です。画家ブーダンによって才能を見出された当初の作品とのことですが、明るい画面やぽっかりと浮かぶ空の雲などには、確かにブーダンの影響を思わせる部分が感じられます。またこの高い写実性。光いっぱいの空の下に広がった小川のせせらぎ(水面に映り込んだ空と木の美しいこと!)と木々の煌めき、そして細かな草花。解説には「水辺に映る木や空などに後のモネの展開が予兆させる。」ともありましたが、私はむしろこの明るい画風に、モネの良い意味での瑞々しさと若さを見出したいと思います。後期のモネと関連させなくても、一目見て惚れるような美しい作品です。
もう一点の「聖ステパノの遺骸を抱え起こす弟子たち」(1860)は、ドラクロワ62歳の時、つまり死の3年前に描かれた作品でした。私はドラクロワが非常に苦手でなかなか好きになれないのですが、処刑後のステパノの亡骸を運ぶという奇異な主題に則った弟子たちの動きある表現には、劇的なシーンをまとめあげるドラクロワの高い構成力を感じます。特にステパノに寄り添う女性と、右下で跪く女性。彼女らの存在は、ステパノの無惨な頭部とともにこの場面の哀しみを強く伝えます。印象深い作品でした。
ところで今回の寄託展示とは、作品の所有者である丸沼芸術の森と埼玉県立近代美術館の間に結ばれた「登録美術品公開契約」によるもので、この2点は、今後5年ほど同美術館にて公開(または保存)されるのだそうです。ちなみにこの美術館では、2000年を最後に新たな作品の購入が行われていません。苦肉の策ではありますが、如何なる形であれ、コレクションをリフレッシュする試みは見る側にとっても嬉しいところです。常設展の充実度は美術館全体の質を表すとも言えるので、今回の制度を利用した取り組みにはこれからも注目していきたいと思いました。
モネとドラクロワの2点は、常設展開催期間中の来年1月28日まで展示されます。
*関連エントリ
「2006年常設展第1期」 埼玉県立近代美術館 5/7
「ホルスト・ヤンセン展」 埼玉県立近代美術館 5/7
「美術館物語 - モネ17歳の作品がやってきた(常設展示)」
2006/4/24~2007/1/28
埼玉県立近代美術館の常設展示では今、モネ17歳の時の作品「ルエルの眺め」と、ドラクロワ晩年の「聖ステパノの遺骸を抱え起こす弟子たち」の2点が、寄託展示という形をとって公開されています。ちなみに「ルエルの眺め」は、モネ総目録の冒頭に登場するという記念すべき作品です。先日、ホルスト・ヤンセンの企画展へ行った際に見てきました。
今開催中の常設展(常設展H18年度第1期。7/17まで。)自体は4つのセクションに分かれていますが、このモネとドラクロワの2点は、入口すぐ脇の小部屋にて展示されています。まずはモネが17歳の時に描いた「ルエルの眺め」(1858)です。画家ブーダンによって才能を見出された当初の作品とのことですが、明るい画面やぽっかりと浮かぶ空の雲などには、確かにブーダンの影響を思わせる部分が感じられます。またこの高い写実性。光いっぱいの空の下に広がった小川のせせらぎ(水面に映り込んだ空と木の美しいこと!)と木々の煌めき、そして細かな草花。解説には「水辺に映る木や空などに後のモネの展開が予兆させる。」ともありましたが、私はむしろこの明るい画風に、モネの良い意味での瑞々しさと若さを見出したいと思います。後期のモネと関連させなくても、一目見て惚れるような美しい作品です。
もう一点の「聖ステパノの遺骸を抱え起こす弟子たち」(1860)は、ドラクロワ62歳の時、つまり死の3年前に描かれた作品でした。私はドラクロワが非常に苦手でなかなか好きになれないのですが、処刑後のステパノの亡骸を運ぶという奇異な主題に則った弟子たちの動きある表現には、劇的なシーンをまとめあげるドラクロワの高い構成力を感じます。特にステパノに寄り添う女性と、右下で跪く女性。彼女らの存在は、ステパノの無惨な頭部とともにこの場面の哀しみを強く伝えます。印象深い作品でした。
ところで今回の寄託展示とは、作品の所有者である丸沼芸術の森と埼玉県立近代美術館の間に結ばれた「登録美術品公開契約」によるもので、この2点は、今後5年ほど同美術館にて公開(または保存)されるのだそうです。ちなみにこの美術館では、2000年を最後に新たな作品の購入が行われていません。苦肉の策ではありますが、如何なる形であれ、コレクションをリフレッシュする試みは見る側にとっても嬉しいところです。常設展の充実度は美術館全体の質を表すとも言えるので、今回の制度を利用した取り組みにはこれからも注目していきたいと思いました。
モネとドラクロワの2点は、常設展開催期間中の来年1月28日まで展示されます。
*関連エントリ
「2006年常設展第1期」 埼玉県立近代美術館 5/7
「ホルスト・ヤンセン展」 埼玉県立近代美術館 5/7
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