都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
熱狂の日音楽祭2006 「モーツァルト:レクイエム」 5/5
ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン 熱狂の日音楽祭2006
モーツァルト レクイエムK.626
指揮 ミシェル・コルボ
合唱 ローザンヌ声楽アンサンブル
演奏 シンフォニア・ヴァルソヴィア
ソリスト
ソプラノ カティア・ヴェレタズ
アルト ヴァレリー・ボナール・ビュクス
テノール ヴァレーリオ・コンタルド
バス ステファン・インボーデン
2006/5/5 16:30 東京国際フォーラムホールC(サリエリ)
今回の「熱狂の日」でも特に注目されていた公演だったのではないでしょうか。コルボとローザンヌ声楽アンサンブル、それにシンフォニア・ヴァルソヴィアによるレクイエムです。もちろんジュスマイアー版での演奏でした。

ともかく慟哭のレクイエムです。入祭誦こそファゴットの序奏に導かれながら静かに歌われていきますが、アタッカで入るキリエから徐々にヒートアップし、これまたほぼアタッカにて入った怒りの日では、まさに激しく荒れ狂う大波のように音楽がうねり出します。ローザンヌ声楽アンサンブルの力強い合唱が、時にコルボの指示によって恣意的にピアニッシモ方向へ沈みながら、それでいて一気に前へと押し出すように大きなフォルテッシモを築く。特に怒りの日における男声と女声の対比は明確です。まるでシュプレヒコールのように双方の合唱が呼び合います。劇的です。
トゥーバ・ミルムではバスのインボーデンがかなり強力でした。適度なキャパシティーでありながら、不思議と響かないこのホールにおいても十分に声を響かせています。また彼は、4名のソリストの中でも特に目立っていました。時に合唱を支えるかのようにして朗々と歌う様子が立派です。まるで魔笛におけるザラストロのような存在感を見せていました。
ローザンヌ声楽アンサンブルは、全体的にざらっとした味わいで美感にやや乏しくも感じられましたが、逞しい歌声と、そのこめられた情感には胸を強く打たれます。絶筆のラクリモサにおいては、女声合唱が男声合唱を巧みにリードして、あまりにも物悲しいこの音楽を切々と歌い上げる。また奉献誦の主イエス・キリストでも、フーガをリズミカルに展開して、イエスを大きく讃えていました。どちらかと言えばピアニッシモ方向よりも、ホールを大きく包み込むようなフォルテの方に持ち味があったかもしれません。明暗のハッキリした表現。(コルボの激しい指揮に反応していたのでしょうか。)女声の逞しさと男声の艶やかさが印象的でした。
サンクトゥス以降はテンポがさらにアップします。それまでも細部まできちっと鳴らさずに、むしろ全体の構造を大まかに捉えるアプローチをとっていましたが、それがより一層、このジュスマイヤーの音楽では強まっていくのです。これは私にはやや大味にも感じられましたが、このような快速テンポのレクイエムもまたコルボの新たな一境地なのかもしれません。サンクトゥスから聖体拝領唱までは、曲をじっくりと味わう間もないほどにあっさりと流れていきました。
シンフォニア・ヴァルソヴィアは、ローザンヌ声楽アンサンブルと比べるとやや弱かったかもしれません。弦こそコルボの指揮に喰らいつくかのように健闘していましたが、金管にもう一歩の美感があればとも思いました。ただティンパニの柔らかい打ち込みは好印象です。激しいこのレクイエムでも、あくまで穏やかに鳴り響きます。
余計な先入観ではありますが、コルボには静謐な音楽をつくるイメージがあったので、この激しいレクイエムには少し驚かされました。ドラマティックなリズムにのった、地の底から沸き出して来たような嘆きの合唱。疾風怒濤のレクイエム。思いがけない鮮烈な演奏です。コルボの音楽にもっと耳を傾けなくてはいけない。そんな気持ちにもさせるコンサートでした。
モーツァルト レクイエムK.626
指揮 ミシェル・コルボ
合唱 ローザンヌ声楽アンサンブル
演奏 シンフォニア・ヴァルソヴィア
ソリスト
ソプラノ カティア・ヴェレタズ
アルト ヴァレリー・ボナール・ビュクス
テノール ヴァレーリオ・コンタルド
バス ステファン・インボーデン
2006/5/5 16:30 東京国際フォーラムホールC(サリエリ)
今回の「熱狂の日」でも特に注目されていた公演だったのではないでしょうか。コルボとローザンヌ声楽アンサンブル、それにシンフォニア・ヴァルソヴィアによるレクイエムです。もちろんジュスマイアー版での演奏でした。

ともかく慟哭のレクイエムです。入祭誦こそファゴットの序奏に導かれながら静かに歌われていきますが、アタッカで入るキリエから徐々にヒートアップし、これまたほぼアタッカにて入った怒りの日では、まさに激しく荒れ狂う大波のように音楽がうねり出します。ローザンヌ声楽アンサンブルの力強い合唱が、時にコルボの指示によって恣意的にピアニッシモ方向へ沈みながら、それでいて一気に前へと押し出すように大きなフォルテッシモを築く。特に怒りの日における男声と女声の対比は明確です。まるでシュプレヒコールのように双方の合唱が呼び合います。劇的です。
トゥーバ・ミルムではバスのインボーデンがかなり強力でした。適度なキャパシティーでありながら、不思議と響かないこのホールにおいても十分に声を響かせています。また彼は、4名のソリストの中でも特に目立っていました。時に合唱を支えるかのようにして朗々と歌う様子が立派です。まるで魔笛におけるザラストロのような存在感を見せていました。
ローザンヌ声楽アンサンブルは、全体的にざらっとした味わいで美感にやや乏しくも感じられましたが、逞しい歌声と、そのこめられた情感には胸を強く打たれます。絶筆のラクリモサにおいては、女声合唱が男声合唱を巧みにリードして、あまりにも物悲しいこの音楽を切々と歌い上げる。また奉献誦の主イエス・キリストでも、フーガをリズミカルに展開して、イエスを大きく讃えていました。どちらかと言えばピアニッシモ方向よりも、ホールを大きく包み込むようなフォルテの方に持ち味があったかもしれません。明暗のハッキリした表現。(コルボの激しい指揮に反応していたのでしょうか。)女声の逞しさと男声の艶やかさが印象的でした。
サンクトゥス以降はテンポがさらにアップします。それまでも細部まできちっと鳴らさずに、むしろ全体の構造を大まかに捉えるアプローチをとっていましたが、それがより一層、このジュスマイヤーの音楽では強まっていくのです。これは私にはやや大味にも感じられましたが、このような快速テンポのレクイエムもまたコルボの新たな一境地なのかもしれません。サンクトゥスから聖体拝領唱までは、曲をじっくりと味わう間もないほどにあっさりと流れていきました。
シンフォニア・ヴァルソヴィアは、ローザンヌ声楽アンサンブルと比べるとやや弱かったかもしれません。弦こそコルボの指揮に喰らいつくかのように健闘していましたが、金管にもう一歩の美感があればとも思いました。ただティンパニの柔らかい打ち込みは好印象です。激しいこのレクイエムでも、あくまで穏やかに鳴り響きます。
余計な先入観ではありますが、コルボには静謐な音楽をつくるイメージがあったので、この激しいレクイエムには少し驚かされました。ドラマティックなリズムにのった、地の底から沸き出して来たような嘆きの合唱。疾風怒濤のレクイエム。思いがけない鮮烈な演奏です。コルボの音楽にもっと耳を傾けなくてはいけない。そんな気持ちにもさせるコンサートでした。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )