都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「出光美術館名品展1」 出光美術館 5/5
出光美術館(千代田区丸の内3-1-1 帝劇ビル9F)
「開館40周年記念 出光美術館名品展1 受け継がれる伝統の美 -絵巻・室町屏風と中国陶磁- 」
4/29-6/18
「熱狂の日」のコンサートの合間に見てきました。(国際フォーラムと出光美術館は目と鼻の先です。)美術館の開館40周年記念に相応しいような、名品揃いの贅沢な展覧会です。
展示されている作品は、仏画、絵巻物、朝鮮・中国陶磁、書、茶道具、室町・中国絵画、そして工芸など、非常に多岐にわたっています。これだけ幅広いジャンルでお宝を展示されれば、必ずこれと言った作品は見つかるもの。会期中に一度展示替えがあり、約半数ほどの作品が入れ替わるとのことですが、満足感の高い内容に仕上がっていました。
まず始めは、この展覧会で最も見応えのあった「伴大納言絵巻」(平安時代)です。誰もが一度は教科書の図版などで見たことがあるのではないかと思うほど有名な作品ですが、現物を目にしてもその迫力、特に中央部分の炎上場面のおどろおどろしい表現には目を奪われます。866年の「応天門の変」の場面が千年以上の時を超えて伝わってくる。さすがに古い作品なので状態は良くありませんが、この生々しさ、臨場感には言葉を失いました。まるで龍が大暴れしているように激しく舞い上がる炎と、全てを覆い尽くそうとする神々しい黒煙。逃げ惑い、また慌てふためく者、そして野次馬。高みの見物をして笑う者までいる。無数に登場する(全部で400名ほどだそうです。)人物に、同じ表情をしている者はいません。今回の展示では、長大な絵巻物(全長26メートル)のごく一部だけしか公開されていませんが、この一点だけでも見に来た甲斐があったとさえ思いました。この卓越した表現力。とても千年以上前の作品とは思えません。必見です。(「伴大納言絵巻」は前期期間のみの展示です。5/23まで。ちなみに10/7-11/5の間は全巻公開も予定されています。)
「伴大納言絵巻」以外ではまず、朝鮮の陶磁から「青磁象嵌柳唐子文浄瓶」(高麗時代)を挙げたいと思います。スリムな体つきに、高く伸びた口。瓶そのものの形も美しいのですが、特に模様に注目です。青磁にうっすらと配された竹や柳。その合間には、何と小さなアヒル(?)や鶴が描かれています。白い線にてシンプルに象られながらも、その表情は大変に可愛らしい。思わず見落としてしまうほど目立っていませんが、この味わいには惹かれました。
中国陶磁では、「饕餮文か」(殷時代)という、とてつもなく古い一対の酒瓶が印象に残りました。素材はブロンズでしょうか。鹿をモチーフにしたのか、それに似た三脚の足と取っ手がついています。また開口部には二つの角のようなものが見えました。無骨な表情です。またもう一点、「金襴手孔雀文仙盞瓶」(明時代)も心に残ります。こちらはかなり時代の下った作品ですが、赤を基調とした精巧な図柄と、まるで逆さハートマークのような模様の組み合わせが興味深いところです。そして艶やかな孔雀の模様も目を引く。またそこには鮮やかな金が施されていました。
書は殆ど見たことなく、その味わい方もあまり良く分からないのですが、「古筆手鑑 見努世友」(奈良~室町時代)には惹かれます。聖武天皇や後鳥羽天皇だと伝えられる直筆の書。それが時代を追ってまとめられている。特に花園天皇による遊び心満載な、とても流麗な書には大変な美感がありました。書が絵画のように雄弁に語り出す。形として見ても極めて美しい作品です。
今月27日から始まる後期展示にも興味が湧いてきました。こちらも是非行きたいと思います。
前期展示 4/29-5/23
後期展示 5/27-6/18
*5/24-26は展示替えのため休館です。ご注意下さい。
*関連エントリ
「出光美術館名品展2」 出光美術館
「開館40周年記念 出光美術館名品展1 受け継がれる伝統の美 -絵巻・室町屏風と中国陶磁- 」
4/29-6/18
「熱狂の日」のコンサートの合間に見てきました。(国際フォーラムと出光美術館は目と鼻の先です。)美術館の開館40周年記念に相応しいような、名品揃いの贅沢な展覧会です。
展示されている作品は、仏画、絵巻物、朝鮮・中国陶磁、書、茶道具、室町・中国絵画、そして工芸など、非常に多岐にわたっています。これだけ幅広いジャンルでお宝を展示されれば、必ずこれと言った作品は見つかるもの。会期中に一度展示替えがあり、約半数ほどの作品が入れ替わるとのことですが、満足感の高い内容に仕上がっていました。
まず始めは、この展覧会で最も見応えのあった「伴大納言絵巻」(平安時代)です。誰もが一度は教科書の図版などで見たことがあるのではないかと思うほど有名な作品ですが、現物を目にしてもその迫力、特に中央部分の炎上場面のおどろおどろしい表現には目を奪われます。866年の「応天門の変」の場面が千年以上の時を超えて伝わってくる。さすがに古い作品なので状態は良くありませんが、この生々しさ、臨場感には言葉を失いました。まるで龍が大暴れしているように激しく舞い上がる炎と、全てを覆い尽くそうとする神々しい黒煙。逃げ惑い、また慌てふためく者、そして野次馬。高みの見物をして笑う者までいる。無数に登場する(全部で400名ほどだそうです。)人物に、同じ表情をしている者はいません。今回の展示では、長大な絵巻物(全長26メートル)のごく一部だけしか公開されていませんが、この一点だけでも見に来た甲斐があったとさえ思いました。この卓越した表現力。とても千年以上前の作品とは思えません。必見です。(「伴大納言絵巻」は前期期間のみの展示です。5/23まで。ちなみに10/7-11/5の間は全巻公開も予定されています。)
「伴大納言絵巻」以外ではまず、朝鮮の陶磁から「青磁象嵌柳唐子文浄瓶」(高麗時代)を挙げたいと思います。スリムな体つきに、高く伸びた口。瓶そのものの形も美しいのですが、特に模様に注目です。青磁にうっすらと配された竹や柳。その合間には、何と小さなアヒル(?)や鶴が描かれています。白い線にてシンプルに象られながらも、その表情は大変に可愛らしい。思わず見落としてしまうほど目立っていませんが、この味わいには惹かれました。
中国陶磁では、「饕餮文か」(殷時代)という、とてつもなく古い一対の酒瓶が印象に残りました。素材はブロンズでしょうか。鹿をモチーフにしたのか、それに似た三脚の足と取っ手がついています。また開口部には二つの角のようなものが見えました。無骨な表情です。またもう一点、「金襴手孔雀文仙盞瓶」(明時代)も心に残ります。こちらはかなり時代の下った作品ですが、赤を基調とした精巧な図柄と、まるで逆さハートマークのような模様の組み合わせが興味深いところです。そして艶やかな孔雀の模様も目を引く。またそこには鮮やかな金が施されていました。
書は殆ど見たことなく、その味わい方もあまり良く分からないのですが、「古筆手鑑 見努世友」(奈良~室町時代)には惹かれます。聖武天皇や後鳥羽天皇だと伝えられる直筆の書。それが時代を追ってまとめられている。特に花園天皇による遊び心満載な、とても流麗な書には大変な美感がありました。書が絵画のように雄弁に語り出す。形として見ても極めて美しい作品です。
今月27日から始まる後期展示にも興味が湧いてきました。こちらも是非行きたいと思います。
前期展示 4/29-5/23
後期展示 5/27-6/18
*5/24-26は展示替えのため休館です。ご注意下さい。
*関連エントリ
「出光美術館名品展2」 出光美術館
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