「花鳥 - 愛でる心、彩る技<若冲を中心に> 第2期」 5/22

宮内庁三の丸尚蔵館(千代田区千代田1-1 皇居東御苑内 大手門側)
「花鳥 - 愛でる心、彩る技<若冲を中心に> 第2期」
4/29-5/28

うっかりしていると会期が終ってしまいます。一つでも見逃せないと思っていたので、慌てて三の丸尚蔵館へ行ってきました。若冲の「動植綵絵」が5回に分けて公開される展覧会です。以下、前回のエントリと同じように、一点ずつ感想を書いていきたいと思います。


「雪中鴛鴦図」(作品番号2-3)

トップバッターは、第1期の「雪中錦鶏図」と同じく、雪の表現が興味深い「雪中鴛鴦図」です。全体的にやや若冲にしては大人しい構図かもしれません。カラフルな鴛鴦(オシドリのつがい)の表情もどこかぶっきらぼう。まるで置物のように、降りしきる雪の中でじっと立っています。そしてこの作品の中で最も生き生きしているのは、水の中に首を突っ込んでいる左下の雌(?)鳥でしょうか。餌をとろうとしているのか、まるで水面と言うよりも砂場のような場所へ胴体を埋め込んでいます。また、右手の雄(?)は片足で立っています。もしかしたら今から飛び立とうとしているのかもしれません。(この鳥の嘴と椿は、同一の顔料を使っているのでしょうか。同じ色に見えます。)


「梅花皓月図」(作品番号2-8)

バーク・コレクションの「月下白梅図」と全く同じ構図です。修復によるものなのか、やや花も枝もベタついているように感じられます。それにしてもこの作品、奥行き感が殆どありません。梅の枝が、まるで蛇が壁でのたうち回っているかのように、縦横無尽に入り組んでいる。そして花は咲いているものより蕾みの方が多い。仄かな月明かりに映えた黄色いおしべが、金粉を振りかけたように光っていました。味わい深い描写です。


「梅花群鶴図」(作品番号2-15)

パッと見ただけでは、鶴が3、4羽いるようにしか見えませんが、足を数えてみると何と11本、つまり6羽もいることが分かります。この狭苦しい空間に6羽もの鶴。それぞれが自分の居場所を確保したがっているのか、ひしめき合い、そしてうごめいています。それにしても一番左にいる鶴の表情。この目は一体何なのでしょう。この窮屈な状態がそんなに嬉しいのか、ニタッと笑うかのように横を向いています。真剣に足元を見つめている手前の鶴とは好対照です。こんなに擬人化された鶴もなかなかありません。


「棕櫚雄鶏図」(作品番号2-16)

白黒の二羽の雄鶏がジロッと睨み合っている、若冲らしい構図の作品です。裏彩色の効果もあるのでしょうか。右側の白い鶏が黄金色に輝いています。そしてそれと正反対の黒鶏。大きく伸びた真っ黒い尾がとてもカッコ良く映えています。まるでロングドレスを着ているかのような鶏たち。これ見よがしと着飾っているようにも見えました。シンプルな構図でありながら、非常に華やかな作品です。


「桃花小禽図」(作品番号2-18)

何やらロココタッチな桃の花。ピンクや白が、画面を雅やかに埋め尽くしています。そして小さなつがいの小鳥たち。中央の幹でひょいっと首を伸ばす小鳥はとても可愛気です。この木でかくれんぼでもやっているのでしょうか。とても嬉しそうな表情を見せています。また、花や鳥以外では、木の幹や枝の表現に注目です。特に画面下側の幹の描写は大変にダイナミック。まるで幹が裂け、中から何かが飛び出してくるかのように描かれています。花に負けない存在感。決して脇役ではない、とても目を引く木の描写。これには驚かされました。


「菊花流水図」(作品番号2-29)

凄まじい構図をとる作品です。それこそロココを通り越すばかりか、一気にシュールレアリスムや現代絵画に通ずるような世界観さえ見せています。おそらく奥から手前に流れる小川と、手前から大きく張り出した岩や菊。それが全く隙のない構成にて見事に合わさっていました。また下の菊は、何故かねじ曲がって反対側を向き、上部のそれはまるで浮いているように見える。ここは四次元空間でしょうか。一応、上から見下ろした構図なのかと思いますが、デフォルメを通り越した驚くべき空間表現がここに実現されています。今回の「動植綵絵」でも特に斬新な作品と言えるのではないでしょうか。これは一推しです。

さて、若冲以外では、円山応挙の「双鶴図」や、狩野探幽の「鷺・藻魚・墨竹・墨梅図」などに見応えがありました。応挙では丁寧に描かれた鶴の表情や、その重ねられた羽の質感が見事です。また探幽の墨絵では、特に右から二点の鷺と魚が良く描けています。巻物の中で小さな魚が群れをなし、気持ち良さそうにスイスイと泳いでいました。引き込まれます。

次回、第3期は来月3日からです。もちろん忘れないように見たいと思います。ちなみにこの第2期は明日28日までです。お見逃しないようオススメします。

*関連エントリ
「花鳥 - 愛でる心、彩る技<若冲を中心に> 第1期」 三の丸尚蔵館 4/9
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