都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
佐藤卓史「シューベルト:楽興の時」他 LFJ2008
ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン 熱狂の日音楽祭2008
公演番号163
シューベルト 楽興の時 D780
シューベルト 3つのピアノ曲 D946
ピアノ 佐藤卓史
2008/5/2 16:45 東京国際フォーラムG409(カロリーネ・エステルハージ)

演奏者の息遣いがダイレクトに指へ乗り移ったかのような、濃密で情報量の多いシューベルトでした。シューベルト国際コンクールで優勝した経歴も持つ、佐藤卓史のコンサートです。
まずはどっしりとした、一音一音に重みを感じるピアノが印象に残りますが、個々の楽章に多様な表情をとるこのプログラムを楷書体でまとめあげた、言わば安定感にも魅力を感じました。また一見、着飾らないでシューベルトの美しさを素直に引き出したかと思うと、その反面でのロマン派的な官能、言い換えればドロドロとした、あたかも曲に潜んでいたセクシャルな部分を音にまとわりつけて露にしたような表現にも驚かされるものがあります。冴え渡る厚みのある響きと、怒るような激しさとエロス、そして舞い戻っての基調にある自然体な落ち着き(それこそ楷書体風です。)が、まるで万華鏡をクルクル回すかのように次々と展開されていくわけです。シューベルトの歌心はもちろん、ベートーヴェン的な構築感と、ショパンの熱情性を同時に楽しんでいるような不思議な気分にもさせられました。
基盤となる、その安定したピアニズムに裏打ちされた意外な表現に、音楽の多面性を体感することが出来ます。シューベルト以外の解釈にも是非接してみたいところです。
公演番号163
シューベルト 楽興の時 D780
シューベルト 3つのピアノ曲 D946
ピアノ 佐藤卓史
2008/5/2 16:45 東京国際フォーラムG409(カロリーネ・エステルハージ)

演奏者の息遣いがダイレクトに指へ乗り移ったかのような、濃密で情報量の多いシューベルトでした。シューベルト国際コンクールで優勝した経歴も持つ、佐藤卓史のコンサートです。
まずはどっしりとした、一音一音に重みを感じるピアノが印象に残りますが、個々の楽章に多様な表情をとるこのプログラムを楷書体でまとめあげた、言わば安定感にも魅力を感じました。また一見、着飾らないでシューベルトの美しさを素直に引き出したかと思うと、その反面でのロマン派的な官能、言い換えればドロドロとした、あたかも曲に潜んでいたセクシャルな部分を音にまとわりつけて露にしたような表現にも驚かされるものがあります。冴え渡る厚みのある響きと、怒るような激しさとエロス、そして舞い戻っての基調にある自然体な落ち着き(それこそ楷書体風です。)が、まるで万華鏡をクルクル回すかのように次々と展開されていくわけです。シューベルトの歌心はもちろん、ベートーヴェン的な構築感と、ショパンの熱情性を同時に楽しんでいるような不思議な気分にもさせられました。
基盤となる、その安定したピアニズムに裏打ちされた意外な表現に、音楽の多面性を体感することが出来ます。シューベルト以外の解釈にも是非接してみたいところです。
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コロベイニコフ「シューベルト:ピアノソナタ第21番」 LFJ2008
ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン 熱狂の日音楽祭2008
公演番号152
シューベルト ピアノ・ソナタ第21番 D960
ピアノ アンドレイ・コロベイニコフ
2008/5/2 15:15 東京国際フォーラムホールD7(ヒュンテンブレンナー)

1986年生まれの若きピアニストが、シューベルト晩年の超大作をリズミカルに弾き切りました。アンドレイ・コロベイニコフのソナタ21番です。
半ばエンドレスに続く「神秘的」(公演冊子より。)な第1楽章から、歌い過ぎることのないコロベイニコフ独自の解釈が冴えていたのではないでしょうか。基本はピュアな弱音の表現に印象深い、この音楽を支配する一種の諦念的な静寂さを意識させるものでしたが、時に物語を切るかのようにして『間』を生み出す様子が、美しいメロディーに隠れた情熱や苦しみを抉り出してくれます。歌心に満ちたこの楽章が、あたかも明暗の対比の烈しいバロック音楽のように聴こえるとは思いませんでした。
軽快なスケルツォは、まるで高速道路を疾走する自動車のようなスピード感です。表向きの叙情性と、音楽自体の持つどこか自由で先進的な構造が同時に提示され、スリリングな緊張感をたたえながら、決して冗長になることない音楽が紡がれていきます。前半楽章、特に1楽章との対比も鮮やかです。
ムードに流されないシューベルトはむしろ新鮮でした。6日の同プログラムも期待出来ると思います。
公演番号152
シューベルト ピアノ・ソナタ第21番 D960
ピアノ アンドレイ・コロベイニコフ
2008/5/2 15:15 東京国際フォーラムホールD7(ヒュンテンブレンナー)

1986年生まれの若きピアニストが、シューベルト晩年の超大作をリズミカルに弾き切りました。アンドレイ・コロベイニコフのソナタ21番です。
半ばエンドレスに続く「神秘的」(公演冊子より。)な第1楽章から、歌い過ぎることのないコロベイニコフ独自の解釈が冴えていたのではないでしょうか。基本はピュアな弱音の表現に印象深い、この音楽を支配する一種の諦念的な静寂さを意識させるものでしたが、時に物語を切るかのようにして『間』を生み出す様子が、美しいメロディーに隠れた情熱や苦しみを抉り出してくれます。歌心に満ちたこの楽章が、あたかも明暗の対比の烈しいバロック音楽のように聴こえるとは思いませんでした。
軽快なスケルツォは、まるで高速道路を疾走する自動車のようなスピード感です。表向きの叙情性と、音楽自体の持つどこか自由で先進的な構造が同時に提示され、スリリングな緊張感をたたえながら、決して冗長になることない音楽が紡がれていきます。前半楽章、特に1楽章との対比も鮮やかです。
ムードに流されないシューベルトはむしろ新鮮でした。6日の同プログラムも期待出来ると思います。
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