「国宝 薬師寺展」 東京国立博物館

東京国立博物館台東区上野公園13-9
「国宝 薬師寺展」
3/25-6/8



会期前にも一度拝見する機会を得ましたが、先日、再度改めて行って来ることにしました。東京国立博物館で絶賛開催中の「国宝 薬師寺展」です。

八幡様に始まり吉祥天に終る同展覧会ですが、やはりどうしても見入るのは三体の仏様、つまりは聖観音菩薩立像と日光、月光の両菩薩像です。シンメトリーでかつ、引き締まった体躯を披露しながら、まさに威厳に満ちた様相で世界を見据える聖観音、そしてチャーミングな風情も漂わせながら、慈しみのオーラを放つ両菩薩像は、思わず惚れてしまうほどの美しさをたたえていました。それにいわゆる観察ではなく、時間を忘れて半ば無心にてまじまじと見てしまうのは、やはりそれが単なる美術品を超越した『何か』であるからなのでしょう。また角度、立ち位置などはもちろんのこと、何気ない瞬間にハッとさせられるような表情を見せる気がするのも、仏像鑑賞における一種の醍醐味かもしれません。心が見透かされているかのようです。

全体的に丸みを帯びて重厚感のある日光菩薩、また腰のひねりもシャープな、やや筋肉質にも見える月光菩薩ですが、今回の展示の目玉でもある後ろ姿からの観賞となると、それとは異なった印象を与えてくれます。正面からではそのふっくらとした肉付き、もしくは静かに笑みを浮かべるような口元に母性も感じる日光菩薩の背面は意外にものっぺりしていて、逆に男性美を発するかのように無骨で逞しい月光菩薩はむしろふくよかに見えました。もちろん性という基準をここに当てるのは殆ど意味を為さないわけですが、ようは正面からでは女性的な日光菩薩、また男性的な月光菩薩が、背面からでは反対になっているようにも思えるわけです。それに全身をリラックスしたように起立して、何事にも動ぜず静かに泰然とある日光菩薩と、足を幾分ステップしながら、今にも前へ進み出すかのような躍動感をたたえる月光菩薩の所作も対比的にうつります。その様子から、半ば優しく受動的に信仰を引きつける日光菩薩と、能動的に恩寵を施す月光菩薩というイメージもわきました。



連休中は入場待ちの長蛇の列が出来ていたそうですが、この日(5/10)はあいにくの雨天だったせいか、会場内でそれほど混み合うことはありませんでした。ただし既に大入りの展示です。会期末には大変な混雑になることも予想されます。(混雑情報

仏様もそろそろお疲れかもしれません。6月8日までの開催です。

*関連エントリ
東京国立博物館で「国宝 薬師寺展」がはじまる(内覧会記事)
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